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(26日、高校野球岐阜大会 岐阜第一6―5美濃加茂)

 五回表2死一、三塁。美濃加茂の四番打者岩井一翔君(3年)は打席で自分に言い聞かせた。「応援してくれる全ての人のために」

 チームメートが連打で作ってくれた好機。なんとしても次につなげたかった。高めの直球を振り切ると、打球は左翼スタンドへ。スタンドでは仲間たちが大喜びしていた。本塁打より、その姿がうれしかった。

 喜ぶ仲間の中に大沢空翔(そらと)君(2年)の姿もあった。今春まで一緒に甲子園をめざしていた仲間だ。

 美濃加茂野球部に憧れ、愛知県から進学。野球部に入部したが、約2カ月後、「レーベル遺伝性視神経症」と診断された。視力が落ち、球がぼやける。マシンの球は打てなくなり、守備ではエラーを連発した。

 「チームに1%でも貢献できるのなら」とマネジャーへ転身した。それでも、大好きな野球への思いは断ち切れず、時間を見つけてはバットを振った。

 思いとは裏腹に病状は進んだ。両目の視力が低下し、日常生活にも影響が出始め、大沢君は決断した。

 「盲学校へ転校します」

 3月末、突然の報告に選手たちは驚き、戸惑い、涙した。誰より悔しいだろう仲間のために、大会前、思いを込めて応援用のピンクのTシャツを渡した。

 「一緒に甲子園に行くからな」

 ホームイン後、岩井君が見上げたスタンドは、喜ぶ大沢君たちでピンク色に揺れていた。

 チームは支えてくれた人たちを思い、一丸となって挑んだが、4強はつかめなかった。「つなぐ打線や守備など絆の強さを見せてくれた」。高橋陽一監督(34)は選手をたたえた。

 「見に来てくれて、ありがとうな」。試合後、駆け寄った選手たちに大沢君は答えた。

 「転校後も仲間として受け入れてくれてありがとうございました」(松山紫乃)