主婦や家事手伝いの女性の中に、自分は「ひきこもり」だと感じている人が少なからずいます。そもそも、家事や育児の環境は、社会とのつながりが絶たれ、孤立しやすいもの。家族や社会の期待に応えようとするあまり、ストレスや生きづらさを抱えてしまいがちです。女性たちの声を聞きました。〈扉の向こうで〉
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不登校から「家事手伝い」へ
制服を着て、家の玄関に立つ。ドアを開けては閉め、また開けては、閉め。神奈川県に住む女性(38)が不登校になったのは、高校1年の夏だった。
はっきりした原因はわからない。高校に合格し、燃え尽きた気もする。いつも初めはうまく人に溶け込むが、次第に関わるのが息苦しくなる。高校を中退した後、専門学校もアルバイトも続かなかった。
家族以外の話し相手と言えばもっぱら、飼っていたハムスターだった。人に会わないよう、夜暗くなってからエサを飼いに行った。スーパーで買い物はできても、レジに並ぶと緊張する。何もしゃべらないわけにはいかない美容院は苦痛で、1年近く行けなかった時期もあった。
20歳すぎのころ、朝方に寝て、昼過ぎに起きる生活になった。掃除や洗濯をして、夕飯を作り、両親らの帰りを待つ。職業は「家事手伝い」だと思っていた。
「働かなくても暮らしていける環境で甘えているだけでは。頑張れば何とかなるのに頑張れない私はダメなんだ、と焦る。自分で作り出した負の言葉の沼みたいなのにずぶずぶとはまっていく感じでした。出口を見つけられないまま日々が過ぎていく」
怒りなのか、悲しさなのか、悔しさなのか。分からない感情が噴き出し、深夜に自分の部屋の物をぶちまけて暴れることもあった。
女性は、なぜ人と関わらないように生きてきたのか。原因は思わぬところにあると気づきます。後半は中高は皆勤賞、大学院も修了した女性の話。彼女は1カ月ほど、外に出られなくなってしまいました。
焦りだしたのは30歳を過ぎ…