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【アピタル+】患者を生きる・眠る「オーバーナイト透析」

 眠っている間に受けることができる「オーバーナイト透析」。どういった患者に向いているのでしょうか。国内でこの治療法を先駆けて採り入れた、本山坂井瑠実クリニック(神戸市)の坂井瑠実院長(78)に聞きました。

 ――オーバーナイト透析を始めたきっかけは。

 50年以上昔、透析自体が治療として浸透する前から、腎臓内科の医師を務めています。長く透析医療に携わる中で「自分だったら寝ている時間を有効に使いたい」と思うようになりました。2005年、兵庫県芦屋市につくったクリニックで、海外でされていた「オーバーナイト透析」を国内で初めて採り入れたのです。

 ――通常の透析より時間をかけるそうですね。

 透析は国内では通常、週3回、各4時間やる場合が多い。1日24時間、1週間で168時間働いている腎臓の代わりを12時間で済ますのです。透析機器の性能は上がりましたが、厳しい食事制限をしてぎりぎりの量であり、透析時間の不足が心臓病などの合併症の原因になっていると考えています。

 オーバーナイト透析では、8時間以上時間をかけることで、きれいにする血液の量を増やしたり、スピードを落としたりして、身体への負担を減らすことができます。さらに、透析をしない日が2日間続かないよう、週3回のオーバーナイト透析と週1回の日中の透析を組み合わせるなどしています。

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 ――オーバーナイト透析は誰でもできますか。デメリットはありますか。

 深夜にクリニックで受けてもらうため、病状が安定し、日中に仕事をしている人が優先となります。また、対応する施設がまだ多くはありません。少しずつ増えていますが、日中の透析施設が朝、昼、晩と1日に3回ぐらい使えるのに対して、オーバーナイト用の施設は1回しか使えず、経営が難しいという事情もあります。本山坂井瑠実クリニックでは27床が満床状態です。1日おきに使う場合が多いので合計で約50人の患者がおり、みな日中に仕事をしている人たちです。

 どうしても寝られなくてオーバーナイト透析ができなかった患者も中にはいます。また災害などの緊急時には、機器を自分で触って、血液を体内に戻すことができるよう、トレーニングもしてもらうことが必要です。これは、患者にとってより自立した治療法である、在宅での血液透析にもつながることと考えています。

 ――在宅での血液透析はあまり広がっていません。

 国内では約700人が在宅血液透析をしています。海外では、患者が病院やクリニックに頼らず、自立して治療できる方法として広まっています。アメリカでは週6回3時間の透析、カナダでは週5、6回、6、7時間のオーバーナイト透析が普及しているという報告があります。国内でも、十分に透析をすることで透析をしていない人と遜色ない体力で当たり前に生きられるようになっています。私は在宅血液透析の患者を約70人診ていますが、生活に合わせて十分な透析ができるので、オーバーナイト透析をきっかけに在宅透析に移る患者を増やしていきたいと思います。

 ――透析以外の治療法として、生体、心停止、脳死下の腎移植があります。

 日本では透析患者の生命予後が世界一だと言われていますが、背景には腎移植が進んでいないことがあります。運転免許証の裏にも臓器提供の意思を書く欄はあるので、多くの人に意思表示について考えてもらいたいと思います。

 

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<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・鈴木智之)