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 27日の鳥取大会決勝。米子東が鳥取城北を6―5で破り、28年ぶり14回目の優勝を果たした。米子東は1960年以来となる春夏連続の甲子園出場。8月6日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する全国大会に出場する。

勇気もらい8回適時打 米子東・長尾駿弥選手

 忘れられない景色がある。最上段まで埋まったアルプス席の応援、自分たちが追いかける1球1球に湧く大きな歓声。今春の選抜大会に正捕手として出場した米子東の長尾駿弥(2年)は、今でもあの景色を鮮明に思い出せる。

 だが、選抜大会ではその応援に勝利を届けることができなかった。「再びこの地に戻り、必ず日本一を届けよう」。チーム全員、その誓いに違いはなかった。思いを胸に刻み臨んだ夏の鳥取大会決勝。ついにここまで来た。あと1勝で――。

 だが、白熱した攻防の中、甲子園への切符に先に王手をかけたのは鳥取城北かのようにも見えた。1点を追う八回裏、岡本大翔(2年)、福島悠高(3年)が連続安打で1死一、二塁の好機を作ったが、次打者が打ち取られ2死まで追い込まれた。ネクストバッターズサークルには今大会1安打の長尾。

 「自分がやってきたことを出し切れ」。紙本庸由監督からの指示はそれだけだった。大会中の打撃の調子が良くないことは、あまり考え込まないように割り切りった。相手投手はここまで直球が多い。狙い球を直球に絞った。

 4球目、低めにきた直球をたたいた。今大会で2本目となった安打は、左翼手を越え、フェンス直撃の二塁打に。2人がかえり、チームに大きな1勝を呼び込む逆転の適時打となった。

 米子東野球部に憧れ同校へ進学した。日南町出身で入学当初は、片道1時間半近くかけ通ったが、学業と練習の両立に限界を感じ、昨秋から米子市内で下宿を始めた。掃除、洗濯。初の一人暮らしは、戸惑いもあったが、なにより支えてくれる人の大切さを教えてくれた。

 長尾の適時打により1点リードで迎えた九回の守り、捕手としてもマウンドの土岐尚史(2年)をしっかりとリードし、相手の最後の反撃を三者凡退に抑えた。最後の打者を内野ゴロに打ち取った瞬間、大きな歓声がスタンドから湧いた。「いつもたくさんの応援から、たくさんの勇気をもらっている」と長尾。恩返しを果たすための切符は手に入れた。「もらった以上の勇気を必ず聖地で返したい」と思いを新たにした。(矢田文)