英明エース、2年連続サヨナラ負け こういう人生なのか
(28日、高校野球香川大会 高松商2―1英明)
2ストライクからスクイズのサインが出た。九回表1死。同点の走者として三塁にいた英明のエース黒河竜司(3年)は、スタートを切った。
相手捕手はインコースに構えていたが、球は外に大きく高くそれ、視界から消えた。打者の前田大(2年)が跳び上がり、バットをぶつけていたと分かったのは本塁を踏んだ後。「追いついた。ここからだ」
1年秋からエースナンバー。2年春の選抜大会で先発した。昨夏の香川大会も準決勝までの4試合で登板。優勝した丸亀城西にサヨナラ負けした。今大会はずっと4番も務め、チームの柱を担い続けてきた。
昨夏から秋にかけて、右足の甲を疲労骨折した。思うような練習ができない時期もあったが、この1年間、その悔しさを思い出しながら練習した。
この日も喜怒哀楽を表情に出さず、淡々と投げた。しかし、六回2死から相手の4番に打たれ、1点を奪われた。ギアを上げた。七回に3連続三振にきって取り、八回に自己最速の143キロを記録した。
九回裏はマウンド上で、昨夏にサヨナラ負けした悔しさを思い出した。力を込めて投げた直球は高めに浮いた。2年連続のサヨナラ打を浴びてしまった。
センターのほうを見つめ、立ち尽くした。サヨナラ負けをする人生なのかな。そう思うと、涙がこぼれてきた。
野球は続ける。「ここでは終わらないんで」。淡々とした口調に戻った。(石川友恵)