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【まとめて読む】患者を生きる・眠る「ぜんそく」

 ある夏の夕方、神奈川県の坂本直美(さかもと・なおみ)さん(75)は突如、息苦しさに襲われました。それが30年以上にわたる、ぜんそくと向きあう日々の始まりでした。発作で、夜眠れないこともたびたび。不安や孤独感を乗り越え、いま一人の患者として思うことは。

44歳の時 息苦しさ

 30年以上経っても、その日の記憶ははっきり残っている。

 1988年8月30日の夕方、神奈川県の坂本直美さん(75)は、自宅の和室にいた。当時44歳。マンションの管理事務所で働き、家事と育児も重なって、ひどく疲れていた。

 洗濯物を取り込み、たたむ前に一休みしようと、畳に横たわったときだった。急に呼吸が苦しくなり、必死に息を吸ったり吐いたりを繰り返した。ハー、ハーという呼吸音。そこに「ヒュー、ヒュー」という音が混じっているのがわかった。聞き慣れた音だ――。

 次男(48)は5歳で小児ぜんそくになり、13歳でよくなるまで、しょっちゅう発作を起こした。そのたびに胸に抱き、救急外来に駆け込んだ。そのとき聞こえていた次男の呼吸音と一緒だった。

 「これは、ぜんそくだ」。苦しそうに息を吐く、幼い日の次男の姿がよみがえった。いまの自分の姿と重なり、恐怖を感じた。

 なんとか一晩をやり過ごし、翌日、当時住んでいた、東京都内の近くの病院を受診した。「ぜんそくですね」。医師の診断に、「やっぱり」と思った。

 ぜんそくは子どもの病気と思われがちだが、大人になって発症することもある。「小児ぜんそく」と区別して「成人ぜんそく」と呼ばれる。一般的に、成人ぜんそくは症状が重くなることが多いといわれる。

 「完全によくなることはない。ぜんそくとは長い付き合いになる」。医師からそう告げられた。「治らないのか……」。ショックだったが、そのときはまだそこまでひどい実感はなく、ピンとこなかった。

 だが、医師が出してくれた抗アレルギー剤を使っても症状は改善しないどころか、日に日に悪くなっていく。発作を繰り返し、1カ月後には入院することになった。

 発作は夜寝た後、明け方にかけて起きることが多い。せきが止まらず、息が苦しくなり、そのたびに眠りを妨げられた。一段落すると、全身がぐったりしているはずなのに、眠れない。次はいつ発作が起きるのだろう? そんな不安にさいなまれるようになった。

■繰り返す発作…会…

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