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 ひきこもり状態の人の高年齢化と、長期化が進んでいます。40~64歳の当事者が全国に約61万人いると推計した内閣府の調査でも、20年以上続いているとの回答が2割近くを占めます。当事者たちは何を思い、苦しんでいるのでしょうか。平成の約30年間の大半をひきこもり状態で過ごした男性(52)が語ってくれました。社会に背を向けざるを得なかった理由とは――。

 《連載「扉の向こうで」の中で、男性の告白を3回構成でお伝えします》

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 長い冬が過ぎ、田んぼに厚く積もった雪が溶けていく。田植えが終わり、稲が青々と育ち、やがて黄金色に染まっていく。収穫が終わり、また冬が来て、一面が雪に覆われていく――。

写真・図版

 この景色を何度、眺めただろう。青森県弘前(ひろさき)市の男性が、長く住んだ家の2階の部屋から見ていた「外の世界」だ。

 「毎年毎年、ああ、また一年が経ってしまったって。何で自分はこうなってしまったのか、このままではダメだって思いながら、でもどうすることもできないまま。単調に一日一日が過ぎていったんです」

 体調を崩し、対人恐怖に陥り、自室にひきこもりがちになったのは22~23歳のころ。日本中がバブル景気に沸き立っていた時代だ。そのままふさぎ込み、30代、40代を迎えても、孤独や自己嫌悪から逃れられなかった。

 バブル崩壊、地下鉄サリン事件、長野五輪、リーマン・ショック、東日本大震災……。時代は巡った。

 「だけど、自分の中で時間は止まったまま。自分だけが取り残されているような気がしました。体の異変や、人が怖いということを家族に訴えてもわかってくれない。誰にも相談できなかったことが、一番苦しかったです」

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「なんで自分だけ。毎日が生きるか死ぬかの連続」

 今年2月、ひきこもり状態の人の家族会「青森さくらの会」(青森市)を通じ、私は初めて男性に会った。

 身長180センチ弱の痩せ形で、目元はくっきりとした印象だ。今も人目が気になってしまい、普段から大きめのマスクを付けている。語り口は穏やかだが、幼少の頃からのつらい体験に話が及ぶと、せきを切ったように語り続けた。

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 「弘前は小さな街ですから、幼稚園、小学校、中学校と同級生の顔ぶれがずっと一緒なんです。だから、いじめっ子とは中学を出るまで縁が切れない。地獄が終わらないんです」

 幼稚園のとき、母の目の前で同…

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