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 婦人科がんの中で一番多いがんは何でしょうか? それは子宮体がんです。発生数がこの10年の間に約2倍に増加しました。子宮体がんは月経が起こったり、妊娠の場所となったりする子宮内膜から発生するがんです。子宮体がんのすべてではありませんが、その多くは肥満が大きな要因になっています。

 子宮体がんはエストロゲン依存性です。すなわちエストロゲンが発がんに関与しており、全体の8割は閉経後の50歳以上で発症します。

 さてここで疑問を感じませんか。閉経すると卵巣からエストロゲンが分泌しないのに、なぜ閉経後の発症が多いのか?それは脂肪、特に内臓脂肪がエストロゲンを作っているからです。その仕組みを説明しましょう。

 女性でも年齢にかかわらず副腎から男性ホルモンであるアンドロゲンが分泌されています。脂肪中にはアロマターゼというアンドロゲンからエストロゲンに変換する酵素が豊富に存在します。加えて閉経後の子宮内膜は微量のエストロゲンにも敏感に反応してしまう性質を持っています。

 エストロゲンに敏感な子宮内膜が長い時間エストロゲンにさらされてがんになっていくのです。卵巣が働いている間は黄体ホルモン(プロゲステロン)が子宮内膜を保護してくれるので閉経前には子宮体がんの発症が少ないのです。

 では、どのくらいの肥満だと危ないのでしょうか?

 BMI(肥満指数)30以上が明らかな危険域になります。疫学調査では、BMI30以上の女性はそれ未満の女性に比べて4倍子宮体がんになりやすいという結果が出ています。150センチの女性では68キロ、160センチの女性だと78キロがBMI30に相当します。皆さんはどうでしょうか?

 さて、BMI30を超す肥満なのに子宮体がんになる人とならない人がいるのはなぜでしょうか?環境因子や遺伝因子という難しい理由も存在しますが、運動や嗜好(しこう)品が子宮体がんになるかならないかの重要な分かれ目になるのです。

 座りっぱなしの生活スタイルは危険です。座っている時間が1日の6割を超えると肥満、糖尿病、心臓病、がんが増えると言われています。ジムなどで1~2時間毎日運動しているからあとは寝ていても大丈夫という考えは禁物です。

 こまめに体を動かしたほうが、脂肪が燃えやすいと言われています。肥満予防にはジム通いよりも掃除、洗濯などの家事や散歩が有効かもしません。

 子宮体がんの予防食品としては大豆イソフラボンが有名です。最近の嗜好品調査では、閉経後でコーヒーを毎日1杯以上飲む習慣のある女性はその習慣のない女性に比べ子宮体がんのなりやすさが60%減少したことがわかりました。

 コーヒーには適度なカリウムが含まれています。体内のカリウムが過剰だと心臓に負担がかかり、逆に不足すると手足のしびれ、腸マヒ(腸閉塞(へいそく))が起こります。コーヒーに含まれている適度な量のカリウムには、腎臓から尿に塩分を排出する利尿作用があるため、血圧が安定し体調が良くなります。

 最も適度なカリウムはインスタントコーヒーに含まれているようです。納豆の朝食をとり食後にインスタントコーヒーを飲んでからこまめに体を動かす、このような生活スタイルが理想の一例かもしれません。

 子宮体がんにならないためには、食生活に気をつけ適度な運動をして適正な体重を保ちましょうと、まさに高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と同じ指導をすることになるのです。子宮体がん検診は、残念ながら法律で定められておらず検診事業には入っていません。閉経後もし不正性器出血を自覚したら早めに医療機関を受診することを勧めます。

<アピタル:弘前大企画・男性も必読! 産婦人科医が語る女性の一生>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座教授 横山良仁)