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「子を持つことが善」という価値観への問い

 川上未映子さんの『夏物語』(文芸春秋)は読み始めてすぐ、懐かしさに出合う。このひとたちを知っている、と。2008年に芥川賞を受けた短編「乳と卵」で描いた女性たちが、再び、にぎやかな関西弁でしゃべっているのだ。一つの短編を丸々のみこんで、生殖倫理というテーマに踏み込んだ。生まれること、産むこと産まないこと、生きることを考える長編だ。

 始まりは2008年、30歳の夏子は、豊胸手術のため上京する姉を駅で待っている。姉の巻子は39歳のホステス。地元の大阪で12歳の緑子を一人で育てている。「乳と卵」は夏子が東京のアパートに巻子と緑子を迎えた3日間を描いた。『夏物語』はその3日間と8年後を描く。

 「乳と卵」を起点としたのは「…

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