津田大介氏一問一答「希望になると考えたが劇薬だった」
「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督を務める津田大介氏の記者会見の主な内容は次の通り。
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「このような形で展示を断念するのは断腸の思い。楽しみにしていただいた方に申し訳なく思う」
――中止は想定内だったのか。
「大過なく(会期の)75日間を終えることが目標だったのは変わらない。抗議が殺到する、脅迫がくるのもすべて想定していて、現実のリスクが大きいものが出てきたら中止せざるをえないと思っていた」
――河村たかし名古屋市長や菅義偉官房長官の発言は影響したのか。
「一切関係ない。そういう状況がある中でこそ生きてくる企画だと思っていた。安全管理上の問題が大きくなったのがほぼ唯一の理由。想定以上のことが、とりわけ電話で行われた。回線がパンクし、受付の人も抗議に対応することになった。対策はあったかもしれないが、抗議の過熱がそれを超えていった。想定が甘かったという批判は甘んじて受けなければならない」
――「表現の自由の現在地を確認する」と言ったが、今回の件を受けてどう考えるか。
「公立の美術館や行政の文化事業でも、細かく内容を確認することはすべきでない。一方、何かのタブーに触れるものがあった場合、SNSを使った圧力やスクラムが出てきている。民間企業や個人なら着信拒否などもできるが、公的機関では対応しなくてはいけない。その対応と表現の自由がぶつかっているのが、現状だと考えている」
――公立の機関での企画が萎縮する可能性がある。
「物議を醸す企画を公立の部門でやることに意味があると考えた。成功すれば企画に悩む人の希望になれると考えたが、劇薬だった。トリエンナーレに入れることが適切だったかは考えなければいけないと思っている」
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