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 第101回全国高校野球選手権大会が6日、阪神甲子園球場で開幕する。深紅の大優勝旗を目指し、代表49校が熱戦を繰り広げる。甲子園の地元、兵庫県西宮市出身で野球少年でもあった俳優・堤真一さんに高校野球への思いを聞いた。

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 甲子園球場は遊び場でした。高校野球の期間は外野席が無料だったので、小学校低学年のころから夏休みになると近所の仲間とお弁当を持って甲子園に行くんです。外野席で鬼ごっこやキャッチボールをしていました。

 少年野球をしていたとき、甲子園でプレーしたこともあります。西宮市内の大会ですけど、何回か勝ち上がると甲子園で試合ができた。グラウンドに立つと広くて広くて。ちゃんとバックスクリーンに「堤」って出た写真は、今もあります。高校も、距離が甲子園に一番近いといわれる高校でした。

 上京してからは甲子園になかなか行けない。でも毎年高校野球はテレビで見ています。今でも忘れられない試合は、1979年の箕島(和歌山)と星稜(石川)戦です。延長十六回で、1点を追う箕島が2死まで追い込まれたが、星稜の一塁手が転んで邪飛を捕れなかった。その直後、箕島の打者が本塁打を打って追いついた。そのまま延長十八回で箕島が勝った。すごいシーソーゲームでした。

 甲子園は僕らが想像つかないくらいのプレッシャーでしょうね。でも、エラーが出てもみんなで支え合えることが高校野球の素晴らしさです。九回で1点差だったら、打者を1人出してしまうだけで、全員が「やべっ」て思う感じとか、それをまたチームで一生懸命乗り越える感じとかが伝わってきて、とても魅力的です。見ている方もどきどきします。

 高校野球は演じることにも通じている気がします。一つのゴロをとっても、転がり方、角度で一度として同じ物はない。常に違う物に対応するって難しいですし、すごいことだなと思います。僕たち役者も舞台で毎回同じせりふを言いますが、空気感など、毎回微妙に違います。そういう何ごとにも対応できる感覚が大事なのは同じかもしれません。とにかくいっぱい練習して、本番では臨機応変に対処する。そんなところも共通していますね。

 いま、高校野球はいい方向に向かっていると思います。球数制限が議論になっていると聞きます。選手が体にむち打っている姿を美しいと思っていた時代は変わっていくんですかね。気持ちの強さとかは大事だけど、根性論が通用しない時代になるのかもしれませんね。

 勝つことも大事ですが、一つ一つに心を込めることを大切にしてほしい。心を込めて一球一球投げたり打ったり。応援も心を込めて。成功しようが失敗しようが、心を込める姿が美しいと思います。(聞き手・森岡みづほ)

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 〈つつみ・しんいち〉 1964年、兵庫県西宮市出身。87年にNHKドラマで主演デビュー後、舞台、映画、ドラマで活躍している。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞、「クライマーズ・ハイ」(08年)で同賞優秀主演男優賞など、多数の賞を受賞。映画「泣くな赤鬼」(19年)では高校野球の監督を演じた。9月13日~10月14日に東京で、10月18~21日に大阪で、舞台「死と乙女」に出演する。