母の遺品にあった1枚の古びたレコード。そこに残されていたのは、太平洋に散った亡き兄の声だった。
押し入れのトランクの中から見つかったレコード盤。そっと針を落とすと、懐かしい声が流れ始めた。
「父よ、母よ、弟よ、妹よ。そして長い間育んでくれた町よ、学校よ、さようなら。本当にありがとう」
塚本悠策さん(84)=千葉県松戸市=が東京・田端で暮らしていた母親の遺品を整理していた、40年ほど前のことだ。「二度と聞くことはできないと思っていたのに……」。声の主は兄の太郎さん。21歳で西太平洋に散り、遺体すら見つからなかった。
太郎さんは慶応大生だった19…
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