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 国学院久我山(西東京)が13日、敦賀気比(福井)に3―19で敗れた。チームには、2人で甲子園をめざした双子がいた。

 「焦らずに仲間を信じて、一つひとつアウトを取ろう」。一回、2死から5連打を浴びて3点を先制され、なお一、二塁。伝令に出た主将の中沢直之(なおゆき)君(3年)がマウンドにできた円陣の中で声を掛けた。輪の中には双子の弟で一塁を守る知之(ともゆき)君(同)がいた。

 守備は「得意ではない」という知之君。「何とか自分の守備から攻撃につなげる」。直後、ゴロをさばいた遊撃手からの送球はショートバウンドになったが、ミットを下から差し出してアウトに。「いいぞ、トモ」。直之君はベンチから飛び出して知之君を拍手で迎え入れた。

 「2人で甲子園に行くこと」は、野球を始めた小学2年生の頃から思い描いていた夢だった。「双子だからいつでもキャッチボールができた」と直之君。新聞紙を丸めて作ったボールを夢中で投げ合った。

 中学時代のシニアチームでは、バッテリーや二遊間を組んだ。食事も風呂も、寝る時間も一緒。同じ生活を送る2人だからこそ、息を合わせることが必要なポジションで力を発揮してきた。

 高校は、自宅から通える国学院久我山を選んだ。文武両道を掲げ、日々の練習時間は3時間程度。住宅街に囲まれた人工芝のグラウンドも他の運動部と共用だ。「互いに高め合える2人で効率よく取り組めば、必ず上をめざせる」との尾崎直輝監督の教えにひかれた。

 高校では、チーム内の激しい競争の中で、2人の関係は仲の良い兄弟から、「レギュラーを争うライバル」へと変わっていった。一塁のポジションを、競い合った時期もある。家で交わす会話も少なくなった。

 負けず嫌いで努力家の知之君は、長打力を生かして一塁のレギュラーをつかんだ。一方の直之君は優しい性格で、視野が広く気遣いができることから主将に。試合では三塁コーチや伝令役を務める。母牧子さん(48)は「兄弟だから比べられることもあるけれど、それぞれの良いところを互いに認め合っている。いい関係に育ってくれた」と目を細める。

 甲子園入りしてから、本調子ではない知之君のために、直之君は練習で打撃投手を務め、知之君の気が済むまで投げ込んだ。知之君は「気持ちよく打たせてもらった。『ありがとう』という思いしかない」と感謝した。

 八回2死二、三塁。知之君が打席に立つと、国学院久我山のスタンドには、双子が登場する人気テレビアニメ「タッチ」の挿入曲の「星のシルエット」を基にしたチャンステーマが響き渡った。「兄のためにも一本打ちたい」。そう思ったが、4球目の外角の球にバットが出ず三振に倒れた。

 知之君が野球を続けるのに対し、直之君は、選手としてはこの夏で区切りを付けるつもりだ。卒業後は栄養学を学び、野球の指導者も視野に入れる。

 試合後、悔し涙を流した知之君は「このままでは終われない。次のステージで兄に恩返ししたい」。直之君は「甲子園に来られたのは、これまでの試合で打ってくれた弟のおかげ。感謝しているし、これからも支えていきたい」と話した。(原田悠自)