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 37年ぶり3回目の出場の立命館宇治(京都)は7日、投手戦を制し、春夏通じて甲子園初勝利を挙げた。指揮する里井祥吾監督(36)は、グラウンドの外でもう一つの顔がある。それはパン職人だ。

 立命館宇治は七回裏、敵失で1点先制。同校が夏の甲子園で初めて奪ったこの1点を守り切り、里井監督は「集中してしっかり戦えた。初めて校歌が聞けてすごくうれしかった」。

 鳥羽(京都)で内野手として甲子園に春夏計3回出場した里井監督は、実家が京都市内で創業60年のパン屋で、今は父親とパンを焼く。クルミパンやクロワッサンをはじめ、総菜パンから菓子パンなど豊富な品ぞろえだ。立命館大に進学後、父と同じ道を選び、卒業後は大手パン屋で1年間修業を積んだ。

 野球の道へ戻るきっかけが訪れたのは2006年、パンづくりでフランス留学を考えていた頃だ。立命館宇治の監督への転身が決まっていた高校時代の恩師から「夕方は時間あるやろ?」と誘われ、コーチとなった。4年前に監督に就任してからも、毎朝4時台から昼過ぎまでパンを焼き、放課後に野球部の練習に赴く。京都大会も仕込みをしてから球場へ向かった。

 野球とパンづくりに共通して大事と思うのは「待つこと」。選手に課題を与えたら、できるようになるまで待つ。パンもおいしくするために生地を発酵させる時間が必要。「できないからすぐに『ダメだな』とせず、待ってみる」。そんな指揮官に対し、中堅手の荒井豪太君(2年)は「監督は無謀なことはしない」と職人気質を感じている。

 甲子園の初戦前日、里井監督の父から差し入れでサンドイッチとウィンナーパンが届いた。選手らが監督の店のパンを口にするのは初めて。決勝点を導く一打を放った右翼手の上田龍一郎君(3年)は「めっちゃおいしかった。縁起がいいのでまた食べたいけど、監督の機嫌しだいですね」。(高井里佳子)