テレビや映画に出てくる救急医は、「野戦病院」のように激務に追われているイメージがあります。そんな中、救急医らで作る日本救急医学会が「人を救うには、まず自分が健康でなければならない」というキャッチコピーを発信して注目を集めました。救急医の労働環境はどのようなものなのでしょうか。学会で医師の働き方改革に関する特別委員会委員長を務める松本尚・日本医科大学教授に実情や課題を聞きました。
拡大する日本救急医学会「医師の働き方改革に関する特別委員会」委員長の松本尚・日本医科大教授
「人を救うには、まず自分が健康でなければならない。そうでないと、判断を誤る。スタッフが迷う。家族が心配する。自分を責める。もしキミが救急医になるのなら、まず自分のことを最優先に考えて欲しい。それを非難する人がいるならば、私たちが引き受ける。高齢化は進む。医師は足りない。だからこそ救急医が健康であること。これは義務だ」
拡大する日本救急医学会のポスター(同学会提供)
――学会のツイートが2千以上リツイートされるなど評判を呼びました。
みなさん、救急医というと、昼夜を惜しまずに働くイメージを持っておられませんか。確かに救急医は忙しいですが、過剰なイメージが先行しすぎている部分もあります。
――キャッチコピーを担当した岐阜大教授の小倉真治・高次救命治療センター長に聞くと「若者に響く言葉を選んだ。現場や自分の安全が確保できなければ患者に最適な治療はできない。我々には継続して治療の質を保つ責任がある」と話していました。
その通りです。救急現場は決してブラックな職場ではないと訴えたかったのです。働き方改革を考えれば、今以上に救急医が増えなければなりません。若い人の誤解を解いて、将来の選択肢として考えてもらいたいと思っています。
――救急医への誤解がある、ということですか?
救急医療の提供の仕方はバリエーションが多いので、一概に働き過ぎとか、そうではないとかは言えないのです。たとえば、救急の外来でさまざまな救急患者を受け入れ初期治療に当たり、あとは各診療科に任せる「ER型」や、入院して以降も、手術や集中治療が必要な場合には自分たちで治療に当たる「自己完結型」などと呼ばれる診療のスタイルがあります。
また、教育や研究を担う大学病院と、一般病院との違いもあります。ヘリや救急車に乗って救急医が現場に向かう「ドクターヘリ」や「ラピッドカー」などの診療形態もこれに加わってきています。
――労働時間にも現場によって違いがあるということでしょうか。
救急医学会の働き方改革に関す…
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朝日新聞社会部