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 映画「ローマの休日」で、主演のオードリー・ヘプバーンが階段に腰をかけ、ジェラート(アイスクリーム)を食べる。そんな名画のワンシーンを、観光客が追体験することができなくなった。世界的な観光名所「スペイン階段」で、飲食だけでなく座ることもローマ市が禁止したからだ。

 7日、市中心部のスペイン広場を訪れると、これまで腰をかける観光客でごった返していた135段の階段は、広場からすっきりと見渡せるようになった。警察官と警備スタッフが観光客が座らないか、目を光らせる。記念撮影をしようと数秒座っただけでもすぐに警笛が鳴り響く。立ち上がるよう警告された観光客は、ばつが悪そうに移動した。

 ローマ市は、スペイン階段での飲食をすでに禁止していたが、7月には座ることも禁じる規制を設けた。階段を汚すなど悪質な場合には、最大400ユーロ(約4万8千円)の罰金が命じられる。警備スタッフの男性は「歴史的建造物である階段が汚され、問題になっていた。この方が、美しく整備されていて良いだろう?」と胸を張る。だが、もはや「ただ通過するだけ」となった観光客からは、不満の声が上がった。

 大阪府枚方市から新婚旅行で訪れた女性(28)は、直前にガイドから「座ることも禁止です」と聞かされた。「『ローマの休日』の舞台を楽しみに来たのに。もう同じようなことはできないんですね」。弟が警告を受けたトルコ人のファティさん(38)は「この階段は、旅行者が腰掛けてゆっくりと街並みや風景を楽しむためにあるのでは。監視を続けて規制する意味が、私には理解できない」とあきれた様子で話した。(ローマ=河原田慎一)