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 いつ、どの電車に乗っても運賃は一緒――。そんな通勤電車の「常識」が変わりつつある。朝のラッシュアワーを避けたり、各駅停車を選んだりした利用者にポイントを還元するサービスが、首都圏の鉄道会社で花盛りだ。混雑緩和をめざすこうした取り組み、原型は70年以上前にさかのぼるのだという。

 京急電鉄は7月から、平日朝のラッシュ時間帯(午前7時半~9時)に上り各駅停車を使ってターミナル駅の品川駅(東京都港区)に向かった客に「京急プレミアポイント」を提供するサービスを始めた。ポイントは1日1回限定で20円相当だが、通勤通学で1年間各停に乗り続ければ4千円分以上がたまるといい、系列店での買い物に使ったり、航空会社のマイルに交換したりできる。

 どうやって各駅停車に乗ったことを確認するのか。

 対象となる電車では、平和島(大田区)―品川間を走行中、車内放送に合わせて人間がほとんど聞き取れない「非可聴音」を流している。専用のスマートフォンアプリ「KQスタんぽ」にこの音を感知させることで乗車が証明され、ポイントが提供される仕組みだ。

 京急によれば、朝ラッシュ時の京急蒲田(同)―品川間の所要時間は、途中2駅にしか止まらない特急は約12分だが、途中9駅に止まる各停は約25分。一方、混雑率でみると、各停は特急のほぼ半分という。京急は「出勤時間を1~2時間ずらす時差通勤はハードルが高いが、十数分早めて各停にすれば、お得で快適になる」とアピールする。

 国土交通省の調査(2018年度)で混雑率182%を記録した東急田園都市線。東急電鉄は09年から、オフピーク通勤を呼びかける「早起き応援キャンペーン」を続けている。この夏は午前7時までに沿線の駐輪場を利用したり、午前7時半までにターミナルの渋谷駅(渋谷区)に着いたりすれば、飲食やスポーツ施設で使えるポイントが付与される。東急の担当者は「東横線なども含め、多い日は1万人以上がピークを外してくれている。田園都市線では3%を超える混雑緩和効果が出ている」と話す。

 鉄道博物館(さいたま市)の奥原哲志学芸員によると、乗客側の行動を変えて輸送力不足を補おうという取り組みには長い歴史がある。戦時中の1944年には、軍需工場に工員を運ぶ輸送力を確保するために時差通勤が強制された記録があるという。60年前後には、高度経済成長による乗客急増に設備増強が追いつかず、旧国鉄が企業や学校に時差通勤、通学への協力を呼びかけたこともあった。

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