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 大津市が終戦記念日に毎年開いてきた行事「平和の鐘突き」を今年から取りやめた。「熱中症対策」と説明するが、戦没者遺族や市仏教会は反発している。

 平和の鐘突きは1989年に始まった。87年に恒久平和都市宣言をした市が、戦没者追悼や平和への祈りを込める行事として続けてきた。市仏教会と市内のキリスト教会に協力を呼びかけ、8月15日正午、市内260カ寺と複数のキリスト教会で一斉に鐘やチャイムを鳴らした。

 年ごとに三井寺や石山寺といった有名寺院を主要会場とし、市長や市幹部が参列する式典を執り行った。戦没者遺族にも案内を出し、集まった約30人の遺族とともに、正午の鐘突きを迎えていた。

 しかし昨年、最高気温が36度を超える猛暑が続いたため、市は災害級の暑さだとして式典を急きょ中止。今年から正式に廃止した。

 市総務課は「高齢の参加者が多く、市民の命を最優先に考えた」という。

 市仏教会は、鐘突きの時間帯を朝夕にずらして続けるよう提案したという。しかし、市は「(玉音放送の)正午に意味があるとして長年続けてきた。近年は朝夕も気温が高く、ずらしても効果は薄い」として採り入れなかった。

 前阪良憲・市仏教会長(78)は「式典の時間を短縮する、鐘突きだけにするなど、続ける方法はあったはず」と批判。今年は、各寺院に8月15日の自主的な鐘突きを呼びかけた。

 父親がフィリピンで戦死した市遺族連合会の服部清和会長(76)は「暑さに苦しみながら亡くなった戦没者も多い。熱中症対策は必要だが、このままでは戦争の歴史が遠ざけられてしまう」と心配している。

 日本遺族会の担当者は、暑さを理由とした追悼行事の廃止は「全国的にも聞いたことがない」と話している。(新谷千布美)