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 31年ぶりの「夏の1勝」を挙げることはできなかった。広島商は、第101回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高野連主催)の初戦で、岡山学芸館に5―6で惜敗。しかし、大正と昭和、平成、令和の四つの元号で甲子園出場を果たし、古豪の健在ぶりを見せつけた。

 先発のエース倉本裕翔(ひろと)君(3年)は、いつも通り落ち着いていた。130キロ台の直球にカーブやスライダーを織り交ぜ、丹念に低めを突いて6回を2失点に抑えた。

 「体重が軽く、ボールに力がない」という課題を克服するため、冬場は毎朝カレーを食べ、練習の合間におにぎりをほおばり、蒸した鶏肉や卵焼きなど高たんぱくの食品も積極的に口にした。走り込みの本数も増やし、体重は約10キロ増えた。練習試合の時に沖縄の高校の投手から教わった「チャタン」という手元で沈む変化球もものにした。

 打線は、伝統の小技が光った。二回表、1死一、三塁から杉山裕季君(3年)が初球をしとめてスクイズ成功。大阪入りしてからも、バント練習を毎日の練習メニューに組み込んで磨いてきた成果が出た。

 力強い打撃も見せた。夏の広島大会こそチームに本塁打が出なかったが、五回に山路祥都君(同)が勝ち越し弾を放った。「自分の実力ではなく、応援が後押ししてくれた」

 六回の攻撃は、今年の広商を体現する展開だった。50メートル6秒の俊足天井一輝(いっぺい)君(同)がフェンス直撃の二塁打を放って出塁。身長155センチと出場49校の選手で最も小柄な北田勇翔君(同)の犠打が相手の野選を誘い、無死一、三塁に。すかさず北田君が盗塁し、水岡嶺君(同)の適時打、真鍋駿(たけと)主将(同)の左犠飛で手堅く加点。

 守備でも北田君、水岡君の二遊間コンビを中心に好捕、好送球が目立った。まさに柔軟な作戦で「堅守柔攻」を見せた。

 終盤、継投策や「堅守」がかみ合わない場面もあったが、選手らとスタンドが一体となって食らいついていった。

 試合後、真鍋主将は「周囲の応援があってここまで来られた。感謝したい」と語った。荒谷忠勝監督も「扉を開いてくれた選手たちに感謝。夏の甲子園に出ることの素晴らしさと怖さを知れた。これを新チームにつなげたい」という。

 先輩たちの悔し涙は、1、2年生の目にも焼き付いたはず。彼らの奮起と成長が楽しみだ。(高橋俊成)