海外作家「不自由展中止は検閲」 展示休止や保留相次ぐ

トリエンナーレを考える

江向彩也夏 前川浩之
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 愛知県内で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(津田大介芸術監督)で、海外作家が作品公開の「保留」を求めたり、作品展示を「休止」したりする動きが出ている。企画展「表現の不自由展・その後」が、テロ予告や脅迫を含め、抗議が殺到したため、開幕3日で中止となったことに対し、作家らは表現の自由を重視する姿勢を示すためと説明している。

 90組以上の芸術祭参加作家のうち、11組の海外作家と芸術祭の国際現代美術展キュレーター(展示企画者)の1人が連名で、12日付の公開書簡を米美術ニュースサイトに発表。このうち2組は韓国人作家ですでに展示を閉鎖しているが、ほかの9組は展示の「保留」を求めた。9組の作品はまだ公開中で、芸術祭事務局は「作家と協議中」としている。

 書簡は企画展の中止を「検閲」と批判し、「検閲された作家への連帯を示すため」の保留だと強調。脅迫ファクスなどの安全上の理由で中止した判断に「同意しない」とし、警察など「対応すべき当局がスタッフや来場者らの安全を保護することが芸術祭の責任だ」と訴える。

 署名したキュレーターのペドロ・レイエス氏は朝日新聞の取材に「キューバで当局と闘って表現してきた作家もいる。私の母国メキシコでは表現の自由を行使した記者が亡くなっており、穏やかな立場は取れない。芸術祭スタッフや津田監督への攻撃ではない」と話した。

 また、現代美術作品としてスクープ記事をアニメ化した動画を出品していた米国の調査報道機関「The Center for Investigative Reporting」(CIR、調査報道センター)も作品の撤去を申し入れた。展示室にはロープが張られて「休止」となっており、芸術祭事務局は「作家と調整中」としている。CIRは「報道機関として表現の自由は我々の使命の核にあるもので、今となっては(芸術祭に)参加することが、表現の自由の価値と衝突しかねない立場になる」などと主張している。

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 【保留の声明に署名した作家(敬称略)】タニア・ブルゲラ(キューバ)、ハビエル・テジェス(ベネズエラ)、レジーナ・ホセ・ガリンド(グアテマラ)、モニカ・メイヤー(メキシコ)、ピア・カミル(メキシコ)、クラウディア・マルティネス・ガライ(ペルー)、イム・ミヌク(韓国、展示閉鎖中)、レニエール・レイバ・ノボ(キューバ)、パク・チャンキョン(韓国、展示閉鎖中)、ドラ・ガルシア(スペイン)、ウーゴ・ロンディノーネ(スイス(江向彩也夏、前川浩之

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