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 女性がヒールのあるパンプス着用を強いられることに異を唱える「#KuToo(クートゥー)」運動が広がっています。女性従業員の履く靴やヒールの高さをルールで縛ることに「女性のみに命じるのは性差別」「健康被害に苦しんでいる」との声が上がる半面、声を上げた女性へのバッシングも起きています。皆さんはどう思いますか。

接客ある会社員「実態は強制」 「ヒール低いと注意」

 朝日新聞は6月、航空、ホテル、百貨店など制服での接客がある業界の大手約20社に取材し、靴に関する規定の有無やその内容を報じました。すると、そのうちの1社で働く女性から「記事にある会社の対応はうそ。実態は強制です」という声が届きました。

 女性が勤める会社は朝日新聞の取材に、ヒールの高さについてはセンチメートル単位の規定があるものの、それは強制ではない、と回答していました。ところが、女性は「とんでもありません。完全な強制です」と証言しました。同僚とも「会社は何を言っているんだ」などと話したといいます。

 この会社では、パンプス以外の靴を履いたり、ヒールが規定より少しでも低い靴を履いたりすると、人事担当者に注意され、規定のヒールの高さの靴に履き替えるように指示されるといいます。

 女性は会社に対し、「足が痛いのでせめてストラップのついた靴を認めてほしい」と申し出たこともありましたが、認められませんでした。

 女性は3年あまりパンプスを履き続け、足の指の腫れや、ウオノメやタコの痛みに苦しみ続けました。いまも毎日足に薬を塗り、年に1度は病院に行って治療をしています。

 女性はこの会社に就職した際の面接で、会社側から「ヒールが履けないのなら仕事はできません」と言われたといいます。仕事か靴か選択を迫られ、仕方なく仕事を選びました。しかし実際の仕事は、決まった高さのヒールでなければできない仕事ではまったくないそうです。

 改善を求めて人事部に声を上げたこともあります。でも返ってくるのは、「これはお客様が求めていることだから」という答え。実際、従業員の立ち居振る舞いまで顧客から細かなクレームを受けることもあります。「クレームを避けようとすると、服装から髪形まで校則のようなルールで社員を縛り、スカート丈やヒールの高さまでセンチ単位で決めるようになってしまうのです」

 画一的な装いをマナーと信じて疑わない社会の目と、それを気にする会社のはざまで、女性たちは苦しめられているようです。

 「足や腰を痛め、体に異常をきたしてまで守る必要のあるマナーなのか、社会全体で考える時が来ているのではないでしょうか」と、女性は訴えます。

海外 性別による規定禁止も

 女性が職場でハイヒールの着用を求められ、批判が起きたのは、日本だけではありません。米国では20~30年前にこの問題が盛んに議論され、通勤時にスニーカーを着用するのが流行し、以後は職場でも自由な靴へという流れができました。米国では靴だけでなく、性別ごとの服装規定を設けること自体を違法とする自治体もあります。

 たとえばニューヨーク市は、市の人権条例のなかで「性別によって違った服装規定や制服、身だしなみのルールを設けることは許されない」と定め、「そのような規定を強要すること自体が十分な差別とみなされる」とうたっています。

 条例は、違反の例として「女性と男性で違った制服を作る」「男性だけに短髪を求める」「女性だけに化粧を求める」などが例示されています。条例は、こうした規定が「性差によるステレオタイプや文化的な規範を押しつけることになりかねない」と警鐘を鳴らしています。条例に違反した場合、企業の規模や深刻度などによって雇用者に最大25万ドル(約2700万円)の罰金が科せられる、と定めています。最近では、男女だけでなく、性的少数者の権利保護という点で、再びこうした服装規定に厳しい目が集まっており、性差による規定の差は人権問題だととらえられています。

 一方、最近話題になったのが、ノルウェー航空でした。今年4月、英紙インディペンデントなどが「女性従業員に対して2センチ以上の高さのヒールを履くように求め、ヒールのない靴を履くには医師の診断書が必要」などと報じたことがきっかけでした。「機内ではヒールのない靴を着用」としていましたが、女性のみに化粧を求める規定があったことなども判明し、性差別だと批判が殺到。「この会社は1950年代だか60年代だかの性差別の世界にいる」「2019年にこんな問題に直面するとは、ほとんど喜劇」など、政治家やメディアから厳しく評されました。

 同紙などによると、この報道から1カ月足らずで会社は規定を改定し、「今後は女性はいつでもヒールのない靴を履いてよく、化粧も強要しない。男性従業員にも化粧を認める」としたそうです。同航空に取材を申し込んだところ、22日までに返事はありませんでしたが、機外での2センチ以上のヒール着用などの規定に対し、これだけの批判が起きたことや、その後の対応は日本との大きな差と言えそうです。

足元 さほど見られていない

 働く女性の靴について、履きやすさよりも「統一感」や「美しさ」を重んじる職場があるのは、なぜなのでしょうか。被服心理学に詳しい、お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所の内藤章江・特任リサーチフェローに聞きました。

     ◇

 #KuTooに賛同した人の中には、明文化されたルールでヒールやパンプス着用を強いられている人に加え、事実上背くのは難しい「暗黙のルール」に、疑問を感じてきた人もいるでしょう。就活する女子学生が履くパンプスやタイトスカートは、その典型的な例です。

 苦痛を感じながらも従う人や、周りと格好が違うことに違和感を覚える人が少なくないのは、日本人の特徴です。こうした価値観は、(暗黙のルールを含め)「指定の靴」に異を唱える人を責める風潮にも、結びついているのではないでしょうか。

 「暗黙のルール」の背景には、女性は女性らしい服装を、という性役割の意識もあります。とりわけ接客業など、いわゆる「女性らしいこまやかさや華やかさ」が求められる職種では、メイクやパンプスといった、女性性を強調するような外見が期待されがちです。「女性は職場の花」といわれた時代がありましたが、機能性より見た目重視で女性の靴を指定している職場では、いまだに、女性に「花を添える役割」を求めているともいえます。

 「みんな同じ」から外れると非難される風潮がある一方で、実は、足元はさほど注目されていません。

 私は視線の動きを可視化する装置を使い、人が相手のどこを見て印象を形成しているかを調べる実験をしています。実は、多くは上半身のみを見て印象を形成しています。どんな靴だったかと聞いても、覚えていない人が多いのです。それでもヒールやパンプスが「強要」されているのは、女性は女性らしさが表現される靴を履くものだ、という根強い固定観念があるからでしょう。

 日本では、外見も価値観も似ている日本人だけの職場が少なくありません。ダイバーシティー(多様性)が進み、いろいろな肌の色や価値観をもつ人が身近に増えれば、靴のちょっとした違いなど、一層気にならなくなるのではないでしょうか。

◇たかがヒール、されどヒール。#KuTooは、規則とは何かを考えさせます。本来、個人の自由を束縛するには相当の理由が必要なはず。ところが日本では幼い頃から髪の色や長さまで人と同じにするよう求められて育ちます。いつ誰がその規則を決め、なぜあるのか。男性も女性も生きにくくする社会のルールを、考え直す時にきています。(宮地ゆう)

◇初めは#KuTooを自分事と思えませんでしたが、ネット署名を始めた女性の「男女平等なようでいて実は違う、ということは靴に限らない」との言葉が、これまで取材してきた社会の端々にあるジェンダーギャップの現状と重なりました。自分で上司に言えば済む話だ、との意見もありますが、それが難しい背景の一つ一つに目を向けていきたいです。(三島あずさ)

靴で仕事を諦めた妹 スーツ着用なら必要

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

 

●カジュアル導入したのに

 以前職場でオフィスカジュアルを取り入れたことがありました。年配世代には「社会人としての意識が足りない」など不評で、揚げ句の果てに「お客様から『いいですね貴社は楽しそうで』と嫌みを言われた」などと、うそか本当かわからない話までされ、結局廃止されてしまいました。(東京都・50代男性)

●接客業の価値とは

 接客業において価値があるのは顧客とのコミュニケーションによる問題解決や提案。足の健康に良い靴を履き、集中出来るように努める方が合理的。規定だからといってただ受け入れるのは思考停止である。(東京都・40代女性)

●上司と相談するのが先

 SNSでムーブメントを起こそうとする人、それに乗っかるマスコミにあきれています。足が痛いならフォーマルに見えるコンフォートシューズもある。デモの前に、自分で工夫したり上司と相談したりするのが先です。身だしなみやTPOの問題を性差別というのはへりくつです。(群馬県・40代女性)

●ハイヒールが好き

 ハイヒールが好きです。スーツを着用する以上、女性には当たり前に必要な装備と考えています。今度は私が「男にこびている」などの目で見られることになると思います。#KuToo運動が激化し、スニーカーを義務づける企業も増えてきています。私は差別され始めたと感じています。ハイヒールもいいけど、ぺたんこもいいよね、という社会にはどうしてならないのでしょうか。(神奈川県・20代女性)

●大好きな仕事を……

 私の妹はパンプスによる外反母趾(ぼし)で手術をしました。オーダーメイドの靴しか履けないので接客業を諦めることになりました。スニーカーはダメだ、ならば辞めてほしいと言われたからです。妹は売り上げナンバー1の実績があり、仕事も大好きでしたが、靴によって全て失いました。今はやりたくもない事務をしています。(東京都・30代女性)

●医学的に改善すべき課題

 性差別以前に医学的に改善すべき健康被害です。医師の私は、職場規定の靴が原因で足の痛みや変形を患う方を診察しますが、足に合った靴を選ぶ以外に解決方法はありません。労災です。問題解決には「靴の規定に際しては健康被害の出ないこと」という法律が必要です。(東京都・50代男性)

●提案してスニーカーに

 展示会等に参加する機会が多く、昨年3センチ程度のパンプスで3日間立ち続けて椎間板(ついかんばん)ヘルニアを発症し、右足が一時的にまひしました。スーツ着用も機能的ではなく、疑問に思い提案して、本年度より動きやすい服装・スニーカーに変更+社名入りエプロンや法被で勤務しました。集客や商談へ発展した件数の差はなく、なんのために女子は服装や靴を狭められるのだろうと思います。(三重県・40代女性)

●なぜ男性だけスーツ?

 建築を学んでいる女子学生です。インターンシップでヒールを着用したまま現場見学に連れていかれ、痛みでまったく実習に集中できなかったことを覚えています。また、女性はオフィスカジュアル、男性はスーツで勤務されていることが印象に残りました。スーツで働きたい女性も、オフィスカジュアルで働きたい男性もいるはずなのに、なぜ? やはり女性は華やかに着飾るべきということでしょうか。女友達も、スーツではなくオフィスカジュアルを着用するように勧められたそうです。本人はスーツで働きたいそうですが、はじめてのボーナスでオフィスカジュアルを購入したようです。良識の範囲内で個人が望むスタイルで働ける社会を待望します。(福岡県・20代女性)

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