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 甲子園で期待通りの活躍をみせている星稜。昨秋の新チーム結成以降、他校を圧倒する試合が目立つ。その背後に「影の部隊」がある。元隊員に、その仕事を聞いた。敵を知り、己を知れば、百戦危うからず――。

 その名は「偵察部隊」。部員らは「偵察」と呼ぶ。任務は対戦相手の情報収集で、チームのインテリジェンスの中心を担う。

 甲子園に頻繁に出場する強豪私立高なら、多かれ少なかれ、そうした部隊を擁しているという。

 星稜の場合、1~3年の各学年4人ずつ、計12人の野球部員で構成する。主な仕事は、相手の動きを記録する「カメラ」▽試合結果を書き留める「スコア」▽相手打線の特徴をみる「打球方向」▽相手投手の球種やバッテリーの方針を探る「配球」、の四つ。いずれも相手の試合を実際に見て、データを集めていく。

 「試合が始まる前から、ある意味で試合は始まっている」と偵察の重要性を語るのは、1年から今春まで務めた出嶋聖治君(3年)。理由はこうだ。「普通、打者は第1打席で相手の球種や球質を見て、第2打席以降で勝負をかける。でも、事前に相手の情報があれば第1打席から勝負できて、チャンスが増える」

 同じく元隊員の金谷太陽君(同)は、多くの試合を見て分析した結果、「データを超えるもの」の存在に気づいた。夏の大会では、全く当たっていなかった選手が、大事な場面で打って試合を決めるケースがある。データでは説明がつかない、こうした展開を、金谷君は「『流れ』や『勢い』が影響を与えた」とみる。流れや勢いをうみ、選手を後押しするのは、会場の声援や雰囲気といい、「そこを味方につけることも大事」と力を込める。

 野球を見る眼(め)を養い、奥深さにも触れる偵察。経験者のなかから、この夏は、山本伊織君(同)と大高正寛君(同)の2人がメンバーの座をつかみ取った。

 1年春から約1年、配球担当を務めた二塁手の山本君は「バッテリーの配球によって守備位置を変える選手の動きを練習に生かしました」。同じく配球担当だった大高君も甲子園で活躍している。「カウントによって相手の配球を読んでいます」

 8強をかけた戦いを控える星稜。掲げる目標は全国制覇だ。そこへ至る道でまず必要なのは、「試合前に、『知らなかったこと』を少しでもなくすこと」(スコア担当の3年、安元渉君)だ。(岡純太郎)