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 生きづらさを抱える子どもたちの支援に在宅緩和ケアで学んだことを生かそうと、横浜市の医師が学校での「いのちの授業」に取り組んでいる。20年ほど前から続けてきたが、夏休み明けを前に、初めて講師を育てる研修会を開き、中高生向けに小説も出した。子どもたちに自分や周りの「苦しみ」と「支え」について考えてもらいたい、という願いが込められている。

 「いのちの授業」に取り組むのは、横浜市の小沢竹俊・めぐみ在宅クリニック院長(56)。多くの患者と接し、看取(みと)りにも関わってきた一方で、いじめ、不登校、自殺など、現代の子どもたちが抱える息苦しさや自尊感情の低さが気になった。20年ほど前から学校で、病気が進んでも支えを得て生きる患者の姿や、「傾聴」などの援助の手法について、話すようになった。

 悩む子どもたちの助けになれば。そう考え、伝えてきた内容をもとに10代向けの小説「折れない心を育てるいのちの授業」(角川書店、税別千円)を23日に出した。

 主人公のユキは中学2年生。同じバスケ部でけがをした親友をうまく励ませなかったり、優しく接してあげられないまま大切な祖父を亡くしたり、周りの人との関係や生き方に悩み、自信を失う。ユキは幼少時から知る女性医師に何度も相談する。「助言や励ましでなく、苦しむ人の言葉を反復しながら聴く」「人の苦しみは比べられない」「自分を大切に思ってくれる人との関係や、将来の夢、選べる自由などが支えとなる」といった話を聞き、自分を取り戻していく――。そんなストーリーだ。

 小沢医師はさらに、学校での「いのちの授業」を広げようと、講師の育成も始めることにした。

 11日、自身が代表理事を務める「エンドオブライフ・ケア協会」の主催で横浜市であった「折れない心を育てるいのちの授業」研修会には、全国から医療者や介護関係者、教師ら約140人が集まった。受講して模擬授業の試験に合格すると、協会の認定講師になれる仕組みにした。

 動画などを使った計90分、2コマ分の模擬授業は、「苦しみの構造」や、自分や周りの人の支えを考える内容だった。がん患者の詩を紹介し、「自分なんていない方がいい」「必要とされていない」と感じるときも、支えがあることに気づいてほしいというメッセージを伝えている。

 ゲストで院内学級で長く教える副島賢和・昭和大大学院准教授は「伝える側が本当に納得していないと子どもに見透かされる。ぜひステップアップを」と、参加者たちを励ました。

 「子どもたちには、困難があっても自分らしく生き抜くレジリエンス(回復力)を身につけてほしい。各地で大人たちがつながり、地域の子どもたちを支えていければ」と小沢医師は話している。問い合わせは同協会(info@endoflifecare.or.jp)。(上野創)