[PR]

 3季連続出場の明石商(兵庫)は16日、宇部鴻城(山口)に延長サヨナラ勝ちで初めて夏の8強入りを果たした。緊迫の投手戦で好リードした捕手の母も、かつて甲子園の土を踏みしめていた。

 十回、サヨナラスクイズが決まった。明暗分かれる歓声の中、明石商の捕手水上桂(みずかみけい)君(3年)は本塁でひざを突く相手捕手に駆け寄り、健闘をたたえた。「初回に本塁打を打たれてずるずる行った。反省点がいっぱいある」。辛勝に気を引き締めた。

 一塁側アルプス席では母三貴子さん(53)が見守っていた。三貴子さんは甲子園がある兵庫県西宮市出身で、高校は地元の市西宮へ進学。同校の女子生徒は、1949年から夏の甲子園の開会式で代表校の先導役を務める。

 プラカードを持つ先輩の姿に憧れ、三貴子さんも3年のときに選考会で合格した。第65回大会の開会式で高鍋(宮崎)のプラカードを手に先導した。緊張はしなかったが、選手たちとの距離が開き、「少し焦ったけれど、迫力ある憧れの舞台を歩きながら感動していました」と振り返る。

 次男の水上君は、自ら望んで、兄の背中を追って幼稚園で野球を始めた。小中学生の頃は休日に三貴子さんが午前5時に起きて弁当を作り、練習場所まで車で送迎もした。「気づいたらしていたので、野球をしていないなんて想像できない」と話す。

 中学時代の先輩を慕って水上君は明石商へ進むと、100人を超す大所帯でも2年からレギュラーに。昨夏は一塁手で甲子園に出場し、新チームからは捕手に転じて今春の選抜大会で4強入りに貢献した。

 母は、高校最後の夏、開会式で入場行進する息子を見てこれまでのことを思い出した。試合に勝っては喜び、負けては悔し涙を流していた幼い頃から野球に打ち込んできた姿が浮かんできたという。

 花咲徳栄(埼玉)との初戦では逆転の2点本塁打を放った水上君。この日は背番号10の左腕杉戸理斗君(3年)の好投を引き出した。水上君は「まだまだ親孝行できていないので、日本一になって恩返ししたい」と意気込む。三貴子さんは「よくやった。日本一の夢をかなえてほしい」。頂点をめざす息子と母の夏は、ますます熱を帯びていく。(武田遼、森下友貴)