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 第101回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社・日本高野連主催、毎日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)で、履正社は大会第12日の18日、準々決勝で関東一(東東京)と対戦した。先行されても焦らない。着実に点を返し、逆転し、突き放した。次戦は休養日を挟み、大会第13日、準決勝第1試合(20日午前9時開始予定)で明石商(兵庫)と対戦する。

勝ち越し 珠玉の犠飛 西川黎君

 五回裏、前打者の適時打で同点に追いつき、なおも1死満塁。「ゴロでゲッツーは避けないと」。6番打者の西川黎(れい)君(3年)は、高い弾道の打球を意識して打席に立った。2球目、振り抜いた打球はぐんぐん伸びたが、相手中堅手がフェンス際で好捕。西川君は天を仰いで悔しそうに笑ったが、勝ち越し点を挙げる貴重な犠飛となった。

 西川君はもともと二塁手だ。だが、大阪大会を前に渡された背番号は7。左翼手の経験はほとんどなかった。当然、外野手用のグラブは持っていない。焦る西川君に声を掛けたのが、1年生からずっと同じクラスで、甲子園では応援団長を務める志水渚君(3年)だった。「これ、貸したるわ」。赤茶色のグラブを差し出し、こう付け加えた。「でも、これ使うとボールが三つに見えるぞ」

 志水君は、自他ともに認めるチームのムードメーカーだ。打撃には自信があるものの、「守備は大の苦手」と志水君。練習でエラーをした後に言うのが「ボールが三つに見える」だった。志水君は、夏のメンバーには選ばれなかった。それでもいつも冗談を言って、みんなを笑顔にしてくれる。「勝たなあかんな」。西川君は志水君から借りたグラブを使って、ここまで勝ち上がってきた。試合では何度も守備機会があったが、「どうやったってボールは一つにしか見えません」と笑った。

 西川君の犠飛で勝ち越しに成功した履正社は、その後勢いに乗る。六回にさらに3得点。相手を突き放し、試合を決めた。勝ち越し点を挙げたものの、西川君はこの日無安打。試合後は「もっと打たないとだめですね」。

 今大会で初めて先行された準々決勝。スタンドからの大声援に何度も勇気づけられた。「本当に、日本一の応援をしてくれている」と西川君は感謝する。「渚たちの応援に応えられるよう、僕らも日本一にならないといけないですね」(山田健悟)