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 3年ぶり6回目の夏の大舞台に挑んだ鶴岡東は、新たな歴史を切り開いた。春の選抜準優勝校を破るなど、同校初の「甲子園2勝」を達成。8強入りはならなかったが、3回戦でも延長十一回に及ぶ激闘を繰り広げ、山形勢の存在感を示した。

 試合前、「カギを握る選手は」と尋ねると、佐藤俊監督は決まってこう答えた。「誰かがカギを持っていてくれればいいですね」。それを裏付けるかのように、甲子園では日替わりでヒーローが登場した。

 1回戦は、U18(18歳以下)日本代表候補にも選ばれた左腕投手を擁する高松商(香川)と対戦。2番打者の竹花裕人選手(3年)が九回表、左翼ポールに直撃する2点本塁打を放ち、相手の追い上げをかわした。

 山形大会で打率1割台だった森弦起選手(3年)も、この試合では八回の適時二塁打を含む2安打を放った。2年生で4番に座った昨夏の山形大会後はけがや不調が続いた。復活を印象づける活躍に「気持ちよかった」と笑顔を見せた。

 春の準優勝校、習志野(千葉)との2回戦は、先発の影山雄貴投手(3年)が八回途中まで4失点の力投で、打っても2安打2打点の活躍。ポーカーフェースを貫いたが、実は「めちゃくちゃ緊張していました」。

 丸山蓮選手(3年)は救援したエース右腕から2打席連続本塁打を放った。新チーム発足時は投手だったが、春から打撃に専念し、持ち前の長打力が開花。9日の1回戦で「バースデータイムリー」を放ったのに続き、大舞台で勝負強さを見せつけた。

 サヨナラで惜しくも敗れた関東一(東東京)との3回戦は粘りが光った。打線は6安打ながら少ない好機を生かして6得点。山路将太郎選手(2年)、1回戦に続いて本塁打を放った竹花選手が、2打点ずつと気を吐いた。影山投手と池田康平投手(3年)の両左腕も18安打を浴びながらも粘り強く投げ、接戦に持ち込んだ。

 佐藤監督は選手の個性を生かした「全員野球」を掲げ、チーム作りに取り組んできた。50メートル走5秒台の荒木遼太選手(3年)は昨年から走塁を磨いてきた。甲子園で代走の場面はなかったが、「今年は特に一人ひとりの個性が強いチーム。みんなで競い合って、全国で戦えるチームになれた」と振り返った。

次は自分が引っ張る 2年の山路将太郎選手

 サヨナラ負けから一夜明けた18日朝。宿舎周辺を散歩する鶴岡東の1、2年生の先頭に、山路将太郎選手(2年)の姿があった。

 17日の関東一との3回戦。1点を追う六回1死一、二塁。下級生で唯一、先発出場した山路選手が打席に立った。二回の先制適時二塁打で「気持ちが乗っていた」という打席。直球を振り抜くと、打球は右中間のフェンス近くまで伸び、同点に追いつく適時二塁打になった。

 足でも見せた。直後に暴投で三塁に進むと、ベンチからはサインプレーの指示。一塁走者の影山雄貴投手(3年)が一、二塁間でわざと挟まれる間に、本塁を陥れた。打線が6安打に抑えられる中、3安打2打点と奮闘した。

 春の公式戦から二塁手のレギュラーに。だがシートノックでミスをしたり、試合でバントを失敗したり。その度、遊撃手の河野宏貴選手(3年)や、大井光来捕手(3年)ら先輩からはきつい言葉も浴びた。それでもめげず、必死に練習に取り組んだ。

 「なんで泣いているんだよ」。試合後のインタビュールーム。目を潤ませる山路選手を、囲んだのは笑顔の先輩たちだ。「今までありがとう」「困ったら、いつでも相談しろよ」――。かけてくれた言葉は温かかった。

 「甲子園で先輩たちとプレーさせてもらったのは自分だけ。その経験をみんなに伝えていかないと。もう先輩には甘えられないから」。新チームを、次は自分が引っ張っていくつもりだ。(西田理人)