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 中京学院大中京(岐阜)は18日、劇的な逆転満塁本塁打で作新学院(栃木)を6―3で破り、春夏通じて初めての4強進出を決めた。岐阜勢としては2009年の県岐阜商以来10年ぶり。チームは地域の壁を乗り越え、一丸となって歴史に勝利を刻んだ。

 1点を追う八回、無死満塁で打席は2年生の元謙太(げんけんだい)君に回った。狙いは直球のみ。2ボール1ストライクからの4球目。「詰まったと思った」という打球は左越えの本塁打となった。

 反撃は七回から始まっていた。元君が投手強襲の安打で出塁し、四球と3連打で2得点。差を3点から1点に縮めていた。2回戦、3回戦に続く逆転劇。「チーム全体のつなごうという意識が感じられた」と不後祐将(ふごゆうま)君(3年)は言う。橋本哲也監督も「全員で一丸となったことが結果につながった」と喜んだ。

 劣勢な場面でもあきらめないチーム力は、大きな壁を乗り越えて育まれた。

 野球部は全寮制で、部員には兵庫県や大阪府出身者が多い。地元の岐阜県民は、元君(多治見市出身)を含めて3分の1ほど。

 「壁」となったのは言葉だ。「なにやっとんねん」。練習中にミスをすると関西弁でげきが飛ぶ。何げない一言だが、岐阜出身の増田大晟(たいせい)君(3年)は「突然怒ったのかと思ってびっくりした」と明かす。

 互いの言葉に慣れず、寮でも学校でも距離が縮まらない日が続いた。ある日、関西勢が岐阜県東濃地域でよく使われる「~やもんで(だから)」「~やら(だね)」といった方言に興味を示し、口にし始めた。

 しばらくすると、岐阜県民も「正味(しょうみ)な」「ちゃうやん」などの関西弁を使うようになった。今では出身地域に関係なく、みんながそれぞれ好きな言葉で話す。「最初は冗談で言っているだけだったけど、言葉をまねし合うことで、互いに話すきっかけになった」と鈴木浩介君(3年)。

 コミュニケーションが増え、互いの距離がぐんと縮まった。さらに昨秋、勝てば選抜出場が濃厚となる東海大会準決勝で東邦(愛知)に逆転負けを喫したことで、チームの団結力を強めた。

 この日、一発を放った元君は言った。「あの本塁打は『お前に任せた』と言ってくれた3年生との絆が生んだ本塁打だと思う」(松山紫乃、藤田大道)