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政治季評 豊永郁子さん

 テレビで報じられるアメリカのトランプ大統領の支持者集会の様子に私たちは衝撃を受ける。憎悪と攻撃性をあらわにして熱狂する人々を目の当たりにするからだ。ここに見る度を越した政敵叩(たた)き、移民叩きは、アメリカ国民に広く支持され得るものなのだろうか?

 2016年大統領選挙でのトランプ氏の勝利は、当初、経済的格差や貧困に関連づけて理解され、グローバル化の敗者である貧しい労働者階級の白人有権者がトランプ氏を支持したという物語が広まった。だが、これはトランプ氏を支持した地域の特徴に基づいて語られたものであり、トランプ氏に票を投じた個人についての調査が進むにつれ、異なる様相が浮かび上がってきた。

 何より、所得も階級もトランプ票には関係しないことが判明した。世代や教育の影響が論じられたが、それらもトランプ票を十分には説明できない。そんな中、トランプ氏支持を最もよく説明するとして注目されたのが「権威主義」だ。政治体制のことではない。個人に存在する心理的傾向のことである。

 アメリカにおける権威主義の研究は、ファシズムを支持した人々の心理的特徴を捉えようとした、ドイツ出身の社会学者アドルノらの1950年の著書を嚆矢(こうし)とする。90年代に政治学者の間でリバイバルがあり、研究の蓄積が進んだ。そして、トランプ氏が共和党の大統領候補に選出された予備選挙の段階で、ある大学院生が発見する。「権威主義者たちがトランプを支持している!」

 権威主義者と呼ばれる人々は、2大政党のどちらの支持者にも存在するが、徐々に共和党に集まるようになっていることは知られていた。そうして共和党内で力を増した彼らが党の本流をなす保守主義者たちを抑え、ダークホースのトランプ氏を大統領候補に押し上げたという。さらに大統領選挙の本選では、民主党支持層や無党派層の中にいた権威主義者たちもトランプ氏を支持した。

 権威主義者とは何者か。

 アメリカの政治心理学者ステナ…

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