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(22日、高校野球 履正社5―3星稜)

 奥川の心は揺れていた。三回、星稜2死一、二塁のピンチで、打席に履正社の4番井上。その初球、外角高めにスライダーが浮く。中堅左に本塁打された。テイクバックの際に右手が足に当たったといい、細心の注意を払わなければいけないはずの1球が、失投となった。

 この回、簡単に2死をとった後、2番に粘られた末の8球目で四球を与えた。次打者の初球、懐を厳しく突いた直球は、引っ張られ一塁線への強いファウルに。ここからボールが四つ続き、2人目の走者を出した。「四球を出さないことが自分の持ち味の一つなのに。結果が3ラン。あの失投だけは悔いが残る」

 チームの、ふるさとの、悲願をその背に負ってきた。2年春からこのマウンドに立ち、注目を浴びながら、着実に成長してきた。23もの三振を奪って、延長14回を投げきった智弁和歌山戦で、その抜きんでた力を改めて証明した。

 最後の夏。もう一人で背負う必要はなかった。「いつまでも奥川におんぶにだっこではいられないので」。選手たちは口々にそう言ってきた。七回、四球、盗塁を絡めて攻め、捕手・山瀬の適時打などで一度は同点に追いついた。「あれが星稜高校の底力だった」と奥川。

 延長18回の激闘の末、箕島(和歌山)にサヨナラ負けしたのが40年前。松井(元ヤンキースなど)が5打席連続で敬遠され、明徳義塾(高知)に屈したのが27年前。世代屈指の右腕のもと、一丸となった星稜。また、濃い残像を残した。(竹田竜世)

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 ●林監督(星) 「三回の井上君の本塁打は褒めるしかない。奥川ら3年生がよく成長して、決勝まで連れてきてくれた。感謝しかない」

 ●東海林(星) 2三振の1番打者。「ここぞ、という場面で打てずに終わった。最後の試合ですけど、悔しいです。履正社の打線はパワーが違った」