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(22日、高校野球 履正社5―3星稜)

 1点を追う三回、2死走者なし。履正社の2番池田は、スライダーを全て見送った。150キロ近い直球はファウルでしのぎ、8球目で四球に。続く小深田はボールになるスライダーにいっさい手を出さずに一塁へ歩く。「世代屈指の右腕」と呼ばれる星稜の奥川から、笑顔が消えた。

 今大会5試合目の登板で初めての連続与四球に、「もぎ取られた四球。打者の圧をすごく感じた」と奥川。直後、履正社の4番井上がとらえた高めのスライダーは、バックスクリーンの左で跳ねた。

 履正社の打者たちは誰に言われるでもなく、決めていた。「低めの変化球は振らない」。この「徹底力」が、最大のライバルから学んだ教訓だった。

 昨夏の北大阪大会準決勝。1点リードの九回2死走者なしから、大阪桐蔭に逆転負けを喫した。押し出しを含む4連続四球などで3失点。当時、2年生捕手だった主将の野口は、マスク越しに見ていた。「際どい球は全部打ちにきて、ボールはきっちり見極めている」。敗戦の窮地に立っているのは大阪桐蔭のはずなのに、「圧を感じた」。

 大阪「2強」の座を占めてきた2校。直近の5年、大阪桐蔭は夏の甲子園に3回出場し、2度の全国制覇を果たした。能力の高い選手に「徹底力」を求めて走攻守を磨き上げ、昨年は圧倒的な強さで春夏連覇を達成した。対する履正社の夏の甲子園出場は、2016年だけで、3回戦敗退だった。夏の大阪での直接対決は前回も含めて11連敗。プロ野球にドラフト1位で進んだ安田尚憲(ひさのり)(ロッテ)らを擁した2年前は選抜大会の決勝で敗れた。

 昨夏、池田はボールボーイとして、その強さを目の当たりにした。「桐蔭は追い詰められているのに最後まで諦めずにやるべきことをやってきた。あの姿は勉強になった」

 同点に追いつかれた直後の八回、野口が決勝の中前適時打を放つ。奥川のボールになるスライダーにバットが止まった、その直後の直球だった。「なんとしても日本一になりたかった」と野口は言う。100回目の王者の強さを肌で感じたからこそ、101回目の夏、初めて王者になれた。(小俣勇貴