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(22日、高校野球 履正社5-3星稜)

 痛すぎる1球だった。快音を残して伸びていく打球を、マウンド上の星稜のエース奥川は見つめるしかなかった。白球がバックスクリーンの左で弾むのを見届け、振り返る。捕手の山瀬に向かって申し訳なさそうに顔の前に右手を立てた。「失投でした。あの1球は悔しいです」

 1点リードの三回。2死からだった。連続四球で一、二塁となり、右打席に履正社の4番・井上を迎えた。その初球。投げた瞬間に外角低めに構えた山瀬のミットが大きく動く。高めに抜けたスライダーは完璧にとらえられ、逆転3ランとなった。

 今大会初めて浴びた本塁打。「追い込まれたら厳しくなるので、カウントをとりに来る球を振っていきたい」と話していた井上の狙い打ちだった。

 奥川は今大会、準決勝まで4試合に登板し、32回3分の1を投げて防御率0・00。決勝の一、二回も得点圏に走者を進められながら粘ったが、強力打線の主砲は失投を逃してくれなかった。

 以降も、立て直せない。仲間が七回に同点に追いついてくれたが、直後の八回も球がばらつく。4安打を浴びるなどして2点を勝ち越された。9回を一人で投げきったが、被安打11で5失点。力負けだった。

 最速154キロの直球を誇り、制球力も抜群。令和初の甲子園で強烈な印象を残した奥川だったが、石川勢初の優勝はかなわなかった。「自分の実力がなかった。負けて悔しいけど、最後にいい試合ができてよかった」。試合後はアルプス席に一礼すると涙がどっとあふれてきた。(山口裕起)