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 第101回全国高校野球選手権大会で初優勝した大阪・履正社は、寮がなく自宅から通う選手がほとんどだ。その中で学校の近くで下宿しながら練習に励む選手もいる。背番号18の控え外野手、大西蓮(2年)もその1人だ。

 兵庫県加古川市出身。2200グラムほどで生まれ、すぐに1700グラム台に落ちた。「ダメかもしれん」と、母千晶さん(40)の脳裏には最悪の事態もよぎったという。1カ月間、保育器で人工呼吸器をつけて入院。退院後もまだ体は小さかったが、「母乳を吸う力が強かったから少し安心した」。夜泣きもすごかったし、よく風邪もひいたという。「183センチ、90キロの今の体からは想像もできないくらい」

 幼稚園の年長くらいから始めたソフトボールも、経験者だった千晶さんの影響だ。休みの日には自宅近くの河川敷で、千晶さんの投げる球を打った。中学生になる頃には、「家を出て野球ができる環境に行く」と家族に話しており、宣言通りに履正社に進んだ。

 大西が高校で一人暮らしを始めると決めた時、「できることはこれくらいしかない」と千晶さんが決めたのが、お昼の弁当作りだ。毎日作れない分、仕事の休みを丸1日使って1週間分ほどをいっぺんに用意する。多いときで13食分を作ったことも。大西も「好きな卵焼きを毎回入れてくれる。親元を離れて、お母さんのありがたみがわかった」と話す。

 大好物のだし巻き卵は、1食につき卵3個つかって作るのが千晶さん流だ。冷凍できる野菜が限られている中で、ピーマンを肉詰めにしたり、アスパラやオクラを使ったりして工夫する。朝から昼にかけて炒め物や焼き物を作り、あら熱がとれた夕方ごろ、ごはんが4合近く入る容器に詰めて冷凍する。翌朝、車を1時間走らせて大西のアパートへ。「どっと疲れはくるけれど、ほかの親も毎日作ってるから同じこと。あの子も頑張っているから、私も頑張ったろ」と力が湧くという。

 履正社は、この全国選手権では控えの野手を起用せずに頂点を取った。大西も試合には出られなかったが、「控えだからこそ吸収できることがある。先輩の姿を見て学んでほしい」と千晶さんは全試合を甲子園で見守った。

 まだ2年生。大西も「この1年が勝負」と気合を入れ直している。千晶さんにとっても、大会中は中断していた弁当作りが始まるが「忙しいのはうれしい」という。来夏を見据え、練習がまた始まる。連覇へ、だし巻き卵入りの愛情たっぷりの母の弁当が援護する。(大坂尚子)