【動画】バリージョシュアさんとめぐる東京バリアフリー 浅草・前編=遠藤啓生、竹谷俊之撮影
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 2020年の東京パラリンピックを前に、競技会場が広がる都内の観光地には外国人旅行者が詰めかけています。昨年、訪日客は初めて3千万人を突破しました。来年はさらなる増加が見込まれています。

 高齢や障害などのため車いすを使って観光を楽しむ人たちの姿も増えてきました。観光庁も障害のある訪日客へのニーズに応えようとしています。駅やバスターミナルなど公共交通機関でのバリアフリー化を進めています。

 障害のある外国人旅行者向けにバリアフリー情報をインターネットで発信しているカナダ出身のグリズデイル・バリージョシュアさん(38)。車いすで10年以上にわたり東京で暮らしている経験をもとに、日本観光サイト「ACCESSIBLE JAPAN(アクセシブルジャパン)」を制作・運営しています。

 朝日新聞社はバリージョシュアさんをナビゲーターに、バリアフリー状況を確かめながら浅草や明治神宮など都内の観光地をめぐります。アクセスのしやすさ、車いすでも利用可能なトイレ、車いすの貸出場所や段差の有無などをリポートしていきます。(遠藤啓生)

 車いすユーザーでカナダ出身のグリズデイル・バリージョシュアさんと東京都内のバリアフリー施設をめぐる「ジョシュとゆく東京バリアフリー」。浅草編前編の舞台は、東京に来た外国人旅行者が必ず立ち寄るという浅草寺(東京都台東区)です。

 年間3千万人近い人たちが参拝する歴史あるお寺ですが、境内はバリアフリーへの理解がすすんだ空間でした。誰もが知る雷門や本堂は、障害者への細かな配慮であふれていました。

 バリージョシュア(以下ジョシュ)さんのような車いす利用者にとって、進む先の段差や高低差は移動する際の大きな問題です。

 浅草寺の玄関口、雷門の巨大ちょうちんの下にはかつて高さ約10センチの段差がありましたが、5年前の大改修の際、その段差を無くしました。今では車いすやベビーカーでも通り抜けられます。

 「(雷門の外側を)回り込めば車いすでも仲見世には難なく行けます。歴史あるお寺がバリアフリーを意識して改修してくれたことがとても嬉しい」

 仲見世を通り抜け、高さ約22メートルの宝蔵門をくぐると、巨大な屋根が特徴の本堂の前にたどり着きます。撮影時に訪れたのは午前10時過ぎ。たくさんの旅行者でにぎわっていました。

 荘厳なお寺を写真におさめようと、皆撮影に夢中です。

 「車いすユーザーは、旅行者の視界に入らず、ぶつかられる危険があります。比較的人が少ない朝の時間帯が車いすユーザーにはおすすめです」と、ジョシュさんは話しています。

 煙が立ちこめる常香炉の横を通り過ぎると、目の前には本堂内に続く18段の石段が迫ります。16年前までは、車いすユーザーはここで参拝するしかありませんでした。

 今では、本堂の西側に溶け込むように、朱色のエレベーター棟が設置されています。おかげで、車いすやベビーカーを使っている人、高齢者の方も本堂内を参拝できるようになりました。

 「高さ10メートルある本堂の天井には、ここでしか見られない神秘的な絵がたくさん描かれています。本堂から見下ろす境内の景色もまた違って見えます」

 本堂の前で笑顔でジョシュさんを迎えてくれたのは、浅草寺庶務部執事の清水谷尚順住職さん。外国人旅行者は毎年増加しているようです。年間約3千万人の参拝者のなかでも約800万人は外国人の方だと言います。

 「高齢や障害のあるアジアからの旅行者の方は最近ではよくお見かけします。バリアフリーへの取り組みは重要で今後もすすめていきたい」と話します。

グリズデイル・バリージョシュアさん

 1981年1月生まれ。カナダ・トロント出身。生後まもない頃の病気で、手足に障害が残り、4歳のときから車いす生活を送る。

 19歳の時に父親と旅行で初来日。駅のホームで職員が出迎え、改札まで車いすを押してくれた経験に感動。日本は「心のバリアフリーが達成されている」と実感する。

 日本永住を目指して2007年夏に再来日。16年には日本国籍を取得する。現在は介護施設「アゼリー江戸川」(東京都江戸川区)で事務職として働く。その傍ら、10年以上日本で暮らしている経験をもとに、外国人障害者向けの日本観光サイト「ACCESSIBLE JAPAN(アクセシブルジャパン)」を制作・運営している。