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 認知症の人は国内に約500万人いるとされる。その症状を改善するのは、薬ばかりではない。運動やレクリエーション、本人に「安心感」を得てもらうケアとしての「非薬物療法」に注目が集まっている。家族ら介護者らへの支援も不可欠という。

 アルツハイマー型認知症と診断された群馬県みなかみ町の男性(当時82)は、自宅で治療を受けていた。怒りっぽくなり、2017年春には、妻にも手を上げるなどしたため、認知症疾患医療センターがある同県沼田市の内田病院に入院することになった。

 病院は、本人の心地よさを基本に、仕事や趣味などの生活歴も細かく分析して行うケアを長年実施。14年から外部にも手法を公開している。

 車いすに座る男性に、スタッフが目線を合わせ、肩に手をあて横から話しかけると穏やかに応えたため、事務職員含めて全スタッフで情報を共有し、接し方も統一した。

 入院して1週間もすると、攻撃的な態度が少なくなった。その頃にした質問への答えから、温泉やビールが好きだとわかり、足湯をしたり家族にノンアルコールビールを買ってきてもらったりした。暴言など行動・心理症状の重症度や介護負担度を示すNPI―Qの点数は、重症度は1週間で10から3に、介護負担度は21から2へと大幅に改善した。

 男性は19年8月に亡くなった。長男(50)は、「もう笑顔の父に会えるとは思っていなかったが、穏やかだった時の表情に戻っていた。一人ひとりを大切にしてくれ、父は心地良さそうだった。本当によかったと思う」と話す。

 ここでは患者は、昼は外出着に着替え、理学療法士らの補助のもとテーブルを拭くのを手伝ったり、院内の畑まで歩いていって野菜を収穫したりするなどの運動療法も組み合わせてケアを受ける。17年5~12月に、行動・心理症状の軽減目的で入院した認知症の男女25人(平均年齢81歳)のNPI―Qは入院1週間で有意に改善したという。今年度は5病院で同様のケアをする研究を始めた。

 田中志子(ゆきこ)理事長は「誰でも嫌なことがあれば、その記憶を引きずる。認知症になると、修復がなかなかできなくなってしまう。不愉快な時間を減らすことが重要。どんな場合に『その人らしく』いられるかを考えて、治療方針を立てている」と話す。

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