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 35人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件で、京都府警は27日、事件発生から40日が経過する中、犠牲者全員の身元を公表した。殺人事件の犠牲者数としては戦後最悪とみられ、すべての犠牲者が京アニの役員や社員で、今回の事件の身元公表は異例の展開をたどった。

 府警幹部は「遺族の心情を最優先に考えて対応したため時間がかかった」と説明する。遺族からは「葬儀や四十九日が終わるまでそっとしておいてほしい」「実名発表はやめてほしい」といった声が寄せられ、府警内部でも幹部会合を繰り返した。

 京アニ側は7月22日、ネット社会の現在、実名が報じられると、プライバシーが侵害され、遺族が被害を受ける可能性があるとし、実名公表を控えるよう府警に要望していた。

 犠牲者の多くは20~30代。小さい子どもを残して亡くなった人もいる。府警は現在も約100人態勢で被害者支援にあたり、遺族の意向を尋ねてきた。

 府警は今月2日、葬儀を終え、実名公表に了承を得られたとして、10人の身元を発表した。捜査関係者によると、残る25人の身元公表について、すべての葬儀が終わった8月26日以降、四十九日が過ぎた9月5日以降、京アニが開くお別れの会(時期未定)の終了後といった時期を検討。最終的に全員の葬儀が終わったタイミングでの公表となったという。

 「大変凄惨(せいさん)な事件により、何の罪もない多数の方が被害に遭われ、関係者のショックも極めて大きい。ご遺族の方々が死を受け入れるまでに時間がかかっていると認識している」。身元を公表した府警の西山亮二捜査1課長はそう語った。遺族と京アニの双方の意向を丁寧に聞いて対応してきたことを強調した。

 25人の犠牲者の遺族からは実名の公表に厳しい意見も多かったが、事件の重大性や公益性を考慮し、府警は実名を公表した。西山課長は「匿名にするといろんな臆測が広がり、間違ったプロフィルも流れる。それで亡くなった方やご遺族の名誉が著しく傷つけられる」とも話した。

 今回、京都に拠点を置く報道各社は、遺族の取材への心理的な負担を軽減するため、事前に発表時の取材について協議。遺族への報道機関の取材が集中するメディアスクラムを避けるため、新聞・通信社とテレビの各1社が、代表して遺族に取材の意向を尋ねる取り組みをした。

青葉容疑者、なお重篤な状態

 全身やけどを負ったさいたま市見沼区の無職、青葉真司容疑者(41)=殺人、殺人未遂、現住建造物等放火などの容疑で逮捕状=は現在も、大阪府内のやけどの専門的な治療が受けられる病院で治療を続けている。京都府警によると、なお重篤な状態が続き、逮捕状を執行するめどは立っていないという。

 府警幹部は「医師が『勾留に耐えられる』と判断しないと逮捕は難しい」と話す。皮膚の移植手術を繰り返し、今月になって呼びかけにうなずいたり、首を横に振ったりして簡単な意思表示はできるようになったという。