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【アピタル+】患者を生きる・眠る「過活動膀胱」(治療の選択肢)

 頻尿や尿漏れ……。おしっこにかかわるトラブルは、年とともに増えていくそうです。過活動膀胱(ぼうこう)もそんな病気のひとつ。なんとなく相談しづらいと、受診をためらってはいませんか? いまは治療の選択肢も増えています。日本大の高橋悟教授(泌尿器科)に聞きました。

――過活動膀胱とは、どんな病気ですか。

 急に我慢できないほどの尿意を感じて頻尿になった状態です。ときに、我慢できずに尿漏れが起きてしまう場合もあります。

 頻尿は1日8回以上トイレに行く状態。睡眠中に1回でもトイレに行くと夜間頻尿と呼びます。尿漏れは自分の意思ではコントロールできない状態です。頻尿、尿漏れ、どちらも生活の質(QOL)を妨げます。

――どれぐらいの患者がいるのでしょうか。

 日本では2003年、40歳以上の健康な男女にした疫学調査で、12.4%の人が過活動膀胱の症状に該当しました。年齢が上がるにつれて、増えていきます。いまの人口構成にあてはめると、1千万人以上と推測されています。

――男女差はあるのでしょうか?

 疫学調査では、症状のある人の割合に大きな男女差はありませんでした。

 ただ、尿漏れを伴うケースは女性に多いです。男性に比べ、女性は尿道が短く、尿をためたり排出したりすることにかかわる「尿道括約筋」の力も弱い。こうした違いも影響していると考えられます。

 頻尿や尿漏れになる原因には、男女にそれぞれ特徴があります。男性は前立腺肥大症、女性は出産や加齢によって膀胱などを支える筋肉「骨盤底筋」がゆるみ、弱くなることが原因になる場合が多いです。

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――どのように診断するのですか?

 「OABSS」という質問票をもとに、この1週間の状態を問診し、回答を点数化して診断します。

 「朝起きたときから寝るまでに、何回くらい尿をしたか」「夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きたか」「急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがあったか」「急に尿がしたくなり、我慢できずにもらすことがあったか」の四つの質問に頻度を回答してもらい、点数化します。

 頻尿などになる病気は、膀胱炎や膀胱がん、膀胱結石、男性の場合は前立腺炎などほかにもあります。こうした病気がないことを確認するため、血液検査や画像検査などもあわせてやります。

――どんな治療がありますか?

 行動療法と薬物療法が、治療の両輪です。

 行動療法とは、生活習慣の改善指導、膀胱訓練、骨盤底筋訓練の総称です。

 生活習慣の改善で大切なのは、「水の飲み過ぎをやめる」「寝る前の水を少し控える」「アルコールやカフェインを控える」「日中はウォーキングや体操をする」などです。肥満も関連するため、体重減少も大切です。

 膀胱訓練は、尿意をもよおしたときに、すぐにトイレに行かずに我慢する訓練です。我慢する時間を少しずつ延ばしていき、膀胱に尿をためられるようにします。

 骨盤底筋訓練は、仰向けに寝た状態や座った状態で、肛門(こうもん)や膣(ちつ)をしめたりゆるめたりを繰り返します。

――薬物療法では、どんな薬を使いますか。

 膀胱の収縮を抑える抗コリン薬、膀胱をゆるませて尿をためられるようにするβ3作動薬がよく使われます。

 抗コリン薬は口の渇きや便秘など、β3作動薬にも便秘の副作用があります。症状や副作用など、患者さんの状態にあわせて使います。男性の場合は、前立腺肥大症がある場合が多いので、αブロッカーなど、ほかの薬もあわせて使います。

 こうした治療で効果がみられない場合は、排尿にかかわる神経を電気や磁気で刺激する治療や、ボツリヌス毒素を膀胱内に注入する治療などがあります。

――頻尿や尿漏れに悩んでいる患者さんに伝えたいことは。

 この病気は、がんなどに代表される病気のように「早期発見、早期治療」がカギになる病気ではありません。

 ただ、もし、頻尿や尿漏れのためにQOLが下がって困っているのであれば、泌尿器科を受診してほしいと思います。

 2003年の疫学調査では、医療機関の受診率は22.7%でした。男女別では、男性36.4%、女性7.7%と、とくに女性の受診率の低さが目立ちました。

 本当に困っているならば、年のせいだからとあきらめたり、恥ずかしいとためらったりせず、一度は診察を受けてください。いまはさまざまな治療があります。女性で骨盤底筋のゆるみが原因の場合は、手術の選択肢もありえます。

 先に説明したように、頻尿や尿漏れのかげに、膀胱がんなどの重大な病気が隠れている場合もあります。医療機関を受診し、きちんと診断をつけることが大切です。

◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・武田耕太)