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「誰が! くそっ、時を巻き戻してるんだ! 黒幕は誰だッ……」

 緑郎が両腕を広げて叫び、地面を何度も蹴った。廃墟(はいきょ)の中を歩き回り、ブツブツと「許さん。このぼくを使い捨てのコマのように利用し、幾度も楼蘭行きの旅をさせたのか? しかも、そのうち一度は我が弟が死んだ、だと?」と繰り返し、夜空を見上げると、

「おい、ぼくらは生きているんだぞーっ! 誰だっ、出てこーい!」

「大将……その答えなら、このヨシコちゃんに心当たりがあるぜ」

 と芳子が神妙な顔つきで言った。緑郎がはっとし、芳子の青白い横顔を睨(にら)み下ろした。

 芳子は腕組みし、

「今回の任務のためにおいらを雇ったのは、何を隠そう、上海の日本財界を牛耳る三田村財閥だ。おいらは虹口(ホンキュウ)にある三田村家に呼びだされ、中二階の応接室で、大将こと間久部緑郎少佐を紹介された……」

「覚えているとも。摩訶(まか)不思議な登場だったからな。首を摑(つか)まれ、犬コロのように放りこまれてきた」

「うん。大将、おいらはね、その前に一階の広間でお呼びを待つ間に、地下に繫(つな)がる秘密の階段をみつけたのさ。で、三田村要造の愛娘(まなむすめ)たる麗奈サンが、『絶対入るなと言われてる』と言うもんで」

「ま、まさか入ったのか」

「入らないわけないだろ。秘密の、階段、だぞ!」

「そんな大声を出すな、不良娘……」

「ともかくだ。暗い階段を下りた…

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