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 神話や伝説の世界を描いたフランス象徴主義の巨匠、ギュスターヴ・モロー(1826~98)。大阪市阿倍野区のあべのハルカス美術館で開かれている展覧会は、彼が生んだ多種多様な「ファム・ファタル(宿命の女)」にスポットを当てる。担当学芸員をして「モローのファム・ファタルは一筋縄ではいかない」とうならせる、「幻想の画家」の女性観とは。

 男性を誘惑し破滅させるファム・ファタル像は19世紀末に流行し、文学や美術の主題としてしばしば取り上げられた。その代表格が、新約聖書を源泉とするユダヤの王女「サロメ」だ。

 王妃にそそのかされ踊りの褒美に聖ヨハネの首をねだるとされる少女のイメージは、この主題を繰り返し描いたモローの作品群などを経て、オスカー・ワイルドの戯曲にも通じる妖女へと変化していく。サロメの幻視という独自の解釈を背景とした代表作「出現」では、宙に浮いた生首と対峙(たいじ)するまなざしが力強い精神性さえ感じさせる。

 モローはギリシャ神話や聖書などを題材に数々のファム・ファタルを描いた。自らの美貌(びぼう)が原因で起きたトロイア戦争の犠牲者を尻目に崇高な威厳をまとうヘレネ、裏切りの計画を秘め肌をあらわにサムソンを待つデリラ、英雄ヘラクレスを奴隷として支配する王女オンファレ。歌声で船乗りを魅了し海に引き込むセイレーンや、人に謎をかけては殺すスフィンクスといった異形の存在も、モローの絵画では魅惑的な肢体を持つ女の姿で表される。

 モローのファム・ファタルは、必ずしも「男を誘惑する悪女」の定型には収まらない。創世記で禁断の果実を食べるエヴァは、自ら蛇の誘惑に負けたことで人類の運命を変えた。神ゼウスに誘拐されるエウロペや王ダビデに水浴を見られみそめられるバテシバは、被害者でありながら間接的・受動的に相手を誘惑する存在として描かれる。

 「女性の地位が向上する中、優…

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