[PR]

 昨年の西日本豪雨で浸水し、再建した岡山県倉敷市真備町箭田の高齢者施設「デイサービスまび」で敬老会が開かれた。敬老の日(16日)を前にした恒例の行事。存続を求める利用者の声を受け再建後、運営を再開したのが昨年9月18日。利用者らはこの1年をしみじみと振り返り、穏やかな日々が戻ったことを喜んだ。

 6日、紅白の横断幕で飾られた室内にお年寄り30人が集まった。職員による花笠音頭を鑑賞後、「花は咲く」などを合唱。職員が編集した1年を回顧するスライドがテレビ画面に映し出された。盆踊りを楽しむ今年8月の様子が映ると、「去年はできなかったもんなぁ」と声が漏れた。

 施設は倉敷市の運営会社「ケア・ワン」が2014年に開所。豪雨の前は約50人が利用していた。利用者や職員は全員無事だったが、平屋建ての施設は屋根の高さまで浸水。浴槽や、送迎車8台など設備もほぼすべて使えなくなった。70人いた職員のうち、真備在住の10人の自宅が被災した。

 施設管理者の泉潤子さん(38)は、安否確認の電話をかけた際、利用者に言われた言葉が忘れられない。「家の片付けは早く済ませるから施設も早く再開して」。施設の後片づけにはSNSなどで募った延べ300人のボランティアが参加。ベッドや車いすも有志から寄贈され、再開の日を迎えた。

 再開までの間、泉さんはふと涙が止まらなくなることが何度もあった。「施設が元に戻るのか不安で……」。再開後の昨年11月の催しで司会のマイクを握ったが、今度は喜びの涙に暮れて言葉が出なかった。再び司会を任された今年は、泉さんを中心に笑顔の花が咲いた。

 今なお、仮住まいから通う利用者がいる。小野光子さん(77)は箭田地区の2階建て自宅が全壊。同市船穂町のアパートから自ら運転し、畑仕事の合間などに通う。「家にいても独りぼっち。ここに来るのが一番の楽しみ」

 敬老会の最中、職員の守屋英美さん(55)は不意の涙で歌詞が詰まった。「本当に元の姿に戻れたんだなと思って、つい」。箭田地区の2階建て自宅は大規模半壊。2カ月ほど仕事を休んで復帰した時を思い出したという。「仕事に戻れないのでは、と不安ばかりだった。ただただうれしい」

 敬老会は17、18の両日も開かれる。(小沢邦男)