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(8日、大相撲秋場所)

 「負ける覚悟はしていた」

 右ひざのけがから、4カ月ぶりに本場所の土俵へ戻ってきた貴景勝。取組を終えて語った言葉は、偽らざる本音だろう。

 久々の実戦は、母校・埼玉栄高の先輩で、同じ突き押しが持ち味の大栄翔が相手。立ち合いからのどわで起こされ、圧力をかけられない。それでも土俵際まで追いつめて、はたき込みを狙うが残された。突きの応酬の末、最後はなんとか勝った。

 令和最初の夏場所を新大関で迎え、「新時代の主役」と期待されていた。この日の姿は、けがをする前のそれにはほど遠かった。相手を追う際にのめったり、勝ち名乗りを受ける時にそんきょの姿勢でよろめいたり。痛めた右ひざの治療とリハビリに4カ月を費やしたが、筋力も相撲勘も戻りきってはいない。

 ただ、白星は手にした。花道を戻る際に「気持ちで相撲を取った」と何度もうなずいた貴景勝。「けがの心配はせず『自分は万全だ』という気持ちで。けがをしていると思うとこわばってしまう」。そう思い至って「ひざは大丈夫」と自身に暗示をかけ、土俵へ向かったという。

 10勝を挙げれば、大関への返り咲きがかなう。「大関をつかむ前の、毎日必死な昔の自分を思い出すために」。締め込みを昨年までの青紫色に戻して臨み、まず一歩前進した。(松本龍三郎)