「なんやその手つき!」。がんの妻が、記者である夫に始めた料理の熱血指導。妻がブログに公開したイラストとともに、闘病を伴走する日々を紹介します。

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僕のコーチはがんの妻 第2話(全16回)

 2017年8月17日、悪性黒色腫(メラノーマ)との診断について主治医の説明を受けるため、大阪市内の総合病院の皮膚科に行った。「説明が長くなるので、先にほかの患者さんを診ます」。そう伝えられ「そんなに悪いの?」と、妻と顔を見合わせる。

 主治医は「転移はありません。でも腫瘍(しゅよう)の厚みが4ミリを超えているのはよくない」。4ミリを超えていると、既に血液を介して他の臓器に転移している可能性が高いという。

 「内臓転移の確率が高いということですか?」と尋ねると、「確率1%でも転移することはあるし、90%でも転移しない人がいる。確率にはとらわれてはいけません」。

拡大する写真・図版料理上手だが、独創的すぎる料理に面食らうこともあった=妻のブログ「週刊レイザル新聞」から

 8月末に腫瘍があった場所の周囲を広く切除する手術をして、その後は転移予防のためインターフェロンの注射をすることにした。

 悪性黒色腫は、つい最近までは内臓転移をするとほぼ助からないといわれた。しかし、免疫細胞を活性化させてがん細胞を攻撃させるオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬や、特定の分子を制御する分子標的薬が開発され、急速に治療効果が上がっているという。転移したとしても、まだ絶望することはないのだ。

患者会、僕はちょっと救われた

拡大する写真・図版2017年8月、手術を終えて退院した翌日、2人で近所の盆踊りを見に行った

 いくつかの病院の「がん相談センター」に電話で相談した末に、国立がん研究センター(東京都中央区)の「希少がんセンター」にたどりついた。セカンドオピニオンをどこで聞いたらよいか尋ねると、「症例の多いところがよいでしょう」と調べ方を教えてくれた。その結果、自宅の近所では大阪国際がんセンター(大阪市中央区)に専門医がいることがわかった。

 診察で、医師は淡々と事実を述べて患者に治療の選択を迫る。がん相談センターでも心までは支えてくれない。記者として情報収集は慣れているはずだったけど、患者と家族は孤独なのだと実感させられた。

 そんな時、「メラノーマ患者会」というホームページを見つけた。同じ病気と闘う仲間がいる。僕はちょっとだけ気持ちが救われたが、妻は「闘病ブログとか見ても、途中で途切れたりしてる。患者会に参加するのは怖い」と言う。僕だけ入会した。

 8月22日、妻は手術のため入院した。僕が「食欲わかないんやけど、夕食に何つくったらいいかなぁ」と相談すると、「ゴーヤチャンプルーやろ。ミソで炒めたらビールに合うんちゃうか?」。「豆腐や卵を入れたらボリューム出るな?」と言うと、「食欲ない時に卵や豆腐を入れたら翌朝まで置いておけないやろ。それより簡単でいいから副菜をつくること!」。

 A4の紙に妻が書いたレシピには「ゴーヤの厚みは肉の厚み次第。バラ肉だから薄く切る。これが今回の秘訣(ひけつ)や」とあった。

 副菜はダイコンおろし納豆をつくった。

 翌朝、病院で写真を見せた。妻の評価は「デロンとしていて盛り付けが汚い!」だった。(藤井満)

     ◇

妻から教わった〈みそ味のゴーヤチャンプルー〉

拡大する写真・図版2017年8月、妻が入院した日につくった「みそ味のゴーヤチャンプルー」

▽材料(1~2人分)

・ゴーヤ 1本

・豚の細切れ肉100グラム

・酒大さじ1

・みそ大さじ1

・砂糖ひとつまみ

・コショウ

▽作り方

①酒とミソ、砂糖、コショウをまぜておく。

②ゴーヤを5ミリの輪切りにする。(当初は白い綿と種子は除いていたが、その後取り除くのはやめた)

③豚肉を炒め、ゴーヤを入れてさらに炒め、しんなりしたら、混ぜておいた調味料を加える。