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【アピタル+】患者生きる・眠る「体内時計のずれ」(治療や予防)

 朝どうしても起きられない、眠りたいのに眠れない……。もしかすると、体内時計の働きに原因があるかもしれません。体内時計の仕組みやまつわる病気について、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部の栗山健一部長に聞きました。

拡大する写真・図版国立精神・神経医療研究センター睡眠覚醒障害研究部の栗山健一部長

 ――体内時計とは何ですか。

 人の体は、1日のうちの適切な時間に適切な状態になるようにコントロールされています。それをつかさどるのが、脳をはじめ体のあちこちで働いている体内時計と呼ばれる機能です。24時間で変化する外界の環境に合わせ、睡眠・覚醒や、代謝、内分泌などの様々な体内環境の調整リズムを統治しています。

 例えば、朝起きてから日中の間は、血圧を上げるなどして活動に適した状態を保ちます。夜になると、睡眠を促すメラトニンというホルモンを出して、眠るための準備を始めます。

 ――体内時計がずれることがあるのですか。

 もともと、人間の体内時計の周期は24時間より少し長くできています。多少のずれは、朝起きたとき光を浴びることなどによってリセットされます。ただ、体内時計がうまく働かず、睡眠のリズムがずれたままになってしまうと、「概日リズム睡眠・覚醒障害」という病気と診断されます。

 ――どんな病気なのでしょうか。

 睡眠・覚醒リズムのずれによって、社会的に求められる時間帯に寝起きができなくなります。ずれ方によって、いくつかのタイプにわかれています。

 頻度が高いのは、睡眠・覚醒リズムが後ろ倒しになる「睡眠覚醒相後退型」です。「睡眠相後退症候群」とも呼ばれます。明け方まで眠れず、昼ごろにならないと起きられないなど、極端に夜型になってしまいます。思春期に発症する人が多いです。もともと思春期は睡眠・覚醒リズムが遅れやすいので、夜型の生活をするうちに戻せなくなってしまい、この病気と診断されることがあります。

 逆に、夕方ごろに眠くなり、早朝に目が覚めてしまう「前進型」は、高齢者に多くみられます。後退型も前進型も、夜寝付けないもしくは早朝に目が覚めて眠れないので、不眠症と間違えられることがあります。

このほかに、毎日一定のパターンで生活を送れない「非24時間型」や、時差ぼけや交代勤務などに関連して起きるものもあります。

 ――どれくらいの患者がいるのですか。

 はっきりとわかっていないのが現状です。睡眠相後退型では、若年者の7~16%という海外のデータがありますが、日本の地方都市での調査では0.4%という報告もあります。

 ――どう診断するのでしょうか。

 睡眠日誌をつけたり、活動量を計測する機器を装着したりして、睡眠・覚醒のパターンを把握し、診断します。学校や仕事がある平日には、無理に体内時計と合わない生活をしている場合もあるので、休日も含めて観察します。疑わしい場合には、睡眠に詳しい心療内科や精神科を受診してみてください。

光を使って治療

 ――どのように治療しますか。

 まずは、体内時計の性質を利用した睡眠衛生指導を行います。特に、体のあちこちに存在する体内時計を統括する脳の体内時計に強く影響する光をうまく使います。例えば、睡眠相後退型であれば、体内時計を前倒しするため、朝に強い光を浴びます。太陽光はとても強力なので、窓際や、屋外で30分~1時間ほど浴びれば体内時計をリセットできます。このほかに、高照度の光が出る機械を使うこともあります。

 この病気に保険適用のある医薬品はありません。体内時計を調節する効果のあるホルモン「メラトニン」のサプリメントや、代替療法としてメラトニンの受容体に作用する薬を医師の判断のもとで使うことがあります。

 若年者では光による治療で改善する人は多いですが、なかなか治らない時は入院して治療する場合もあります。ただ、難治性の人では、入院して改善しても、退院後に正常なリズムを維持していくのが困難なこともあります。早めに正確な診断を受け、治療方針を決めていくことが大切です。また、概日リズム睡眠障害には、別の精神疾患が合併していることもあるので、その診断と治療も並行して行うことが望ましいです。

 ――予防策はあるのでしょうか。

 かかりやすい年齢は小学校高学年から20歳ぐらいまでとされています。この間に不規則な生活や極端な夜型生活を長期間続けないことが予防には重要でしょう。特に、朝型か夜型かは個人の特性もあると言われていますので、特に夜型傾向の強い人は注意した方がよいと思います。朝に浴びる太陽の光以外にも、規則正しい食生活や、メリハリのある活動習慣なども、概日リズム睡眠・覚醒障害を防ぐのに有効です。

◇ご意見・体験は、氏名と連絡先を明記のうえ、iryo-k@asahi.comメールするへお寄せください。

<アピタル:患者を生きる・眠る>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・松本千聖)