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 SL銀河に乗った。4~12月の週末などに岩手県のJR花巻―釜石間を走る蒸気機関車だ。いったん引退していたが観光による東日本大震災の復興支援のために5年前に改修、復帰した。宮沢賢治の銀河鉄道の世界をテーマにした車内には、ギャラリーやプラネタリウムもあり、4時間余りの旅は飽きることはない。沿線から手を振って歓迎してくれる人もいて楽しい。

 ただ一つ、気になったのは、窓外にもくもくと流れる黒煙だ。JR東日本盛岡支社に尋ねると、片道に消費される石炭は約2・5トン、二酸化炭素に換算すると約6トンなので、乗客1人当たりでは35キログラム程度になる。

 そんなことに思いをはせたのは、各国で脱石炭が進むからだ。欧州の気候変動のシンクタンク「E3G」が先月発表した主要7カ国(G7)の石炭政策の評価報告で、日本は5年連続の最下位だった。日本はG7で唯一、国内外での石炭火力発電所の新設計画がある。フランス、英国、イタリア、カナダが石炭火力ゼロの方針を掲げ、トランプ政権が石炭業界を支援する米国でも石炭火力の閉鎖が相次ぐ。低品質の石炭鉱山を抱えるドイツも2028年までの脱石炭を打ち出している。

 このまま石炭を使い続ける限り、温暖化の深刻な影響を避けることはできない。気候変動対策に積極的な世界の機関投資家たちは6月、G20首脳会議議長の安倍晋三首相に、石炭火力への融資や建設を減らすよう書簡を送った。だが、G20では「脱炭素」にリーダーシップを発揮するどころか、日本は世界の流れに逆行し続けている。口では「地球温暖化防止に貢献」「再生可能エネルギーの主力電源化」と言いながら、本気さが感じられない。

 それは電力広域的運営推進機関が3月にまとめた電力各社の2028年の供給計画からもうかがえる。原発4%、再エネ26%、液化天然ガス(LNG)29%、石炭37%、石油3%。政府が目指す30年の電源構成の原発20~22%、再エネ22~24%、LNG27%、石炭26%、石油3%といかに違うことか。「原発再稼働が出来ないと石炭を増やすぞ」と脅しているようにも映る。何より18年の実績で41%のLNGを10年後に29%に減らし、30%の石炭を37%に増やすというのが解せない。

 と言いつつ、SLに揺られ、郷愁に浸っている自分の身の置き場に困った。「博物館の動く歴史的遺産と考えれば、SLには教育的な効果もあるんじゃないですか」。明日香寿川(あすかじゅせん)・東北大教授(環境政策)の助言を聞いて、少し気が楽になった。

 SLに限らず、近代文明は石炭から多くの恩恵を受けてきた。だが、感謝しつつ、きっぱりと別れる時期が来ている。今回、楽しみのために出した二酸化炭素は、普段の省エネや再エネ利用での削減を心掛けるとしよう。(編集委員・石井徹