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 約580億円分の暗号資産(仮想通貨)が交換業者からハッキングにより盗まれたコインチェック事件をめぐり、国連安全保障理事会が今年3月、「北朝鮮ハッカーの関与」を示唆する報告書を公表した。ところが、今月新たに公表された報告書からはコインチェックに関する記述が消えていた。専門家は前回の報告書について、検証が不足していたと指摘。「こんな手抜きはあってはならない」と批判する。

 国連安保理の北朝鮮制裁に関する専門家パネルは今月5日に公表した新たな報告書で、北朝鮮が各国の金融機関や暗号資産交換所にサイバー攻撃を仕掛け、20億ドル(約2100億円)相当の資金を違法に取得したとする試算をまとめた。

 コインチェック(東京)がハッキングを受けたのは昨年1月。事件の「北朝鮮説」が前回報告書で示された根拠は、ロシアのセキュリティー企業がまとめたリポートの引用だった。だがリポートを読むと、北朝鮮説とする根拠はどこにも書かれていなかった。朝日新聞が今年5月、この企業に情報の根拠について尋ねたところ、「北朝鮮のハッカーが関与した可能性を示唆する間接的な証拠しかない」との返答だった。

 「北朝鮮」の記述が消えた新たな報告書では、サイバー攻撃を受けた交換所のリストとして、前回の報告書でも触れられていた韓国の交換所の名前があった。新たにスロベニアやインド、バングラデシュなどの交換所が追加されており、多くの情報源について「加盟国によると」としている。

 専門家パネル元委員の古川勝久氏は、「加盟国などからの情報を改めて精査した結果、北朝鮮の関与を疑う合理的な根拠が見つからなかったからだろう」とみる。そのうえで「国連の報告書に記載されると、その情報は国連が検証済みの『事実』として世界に受け止められる。前回の報告書では、パネルがロシア企業のリポートを引用した際、その内容を検証した痕跡は見受けられない。こんな手抜きは本来、あってはならない」と批判した。(編集委員・須藤龍也)