舞妓(まいこ)になる前の見習い中の少女を「仕込み」という。仕込みは約1年間、住み込みで花街のしきたりや礼儀作法、独特の言葉や舞踊などを学ぶ。京の花街では、夏休みや冬休みを利用して一時的に仕込みを体験してもらい、花街の雰囲気や厳しさを肌で感じてもらうところが珍しくない。この夏、憧れの舞妓になることを夢見て岐阜から「仕込みさん体験」にやってきた16歳のある1日をのぞいてみた。

 「おたのもうします」。朝10時、まだあどけなさの残る私服姿の女性3人が、元気な声で迎えてくれた。このうち2人は仕込みさん。もう1人が、この日で仕込み体験を始めて1週間になる島田妃那(ひめな)さん(16)。岐阜県内の公立高校に通う1年生だ。

 島田さんは8月5日から2週間、京都の花街・宮川町のお茶屋「駒屋」で仕込み体験をした。ふだんは会社員の父と、ドッグトリマーをする母、兄と妹の計5人で暮らしている。

 舞妓との出会いは小学6年生のとき。修学旅行中に祇園の花見小路で偶然見かけ、ひかれた。中学に入ってからも、テレビなどで見る舞妓のたたずまいやトークに引き込まれ、憧れがつのったという。

 舞妓とは本来、芸妓(げいこ)になる前の修業中の身をさす。昔は10歳そこそこでデビューすることもあったが、今はどの花街も中学を卒業した後でしかなれない。島田さんも、本当は中学を出たらすぐ舞妓を目指したかったが、「高校を出てからでも遅くないのでは」という両親の意見もあり、地元の高校へ進学。だが入学後も舞妓や芸妓への憧れは膨らむばかりだった。

 今春、意を決して駒屋に自ら電話をかけ、「舞妓になりたい」と志願した。5月に父親と一緒に駒屋のおかみ、駒井文恵さんと面談。まず夏休みに仕込み体験をさせてもらうことになった。

 数あるお茶屋から駒屋に連絡したのは、テレビで見た憧れの舞妓、千賀遥(ちかはる)さん(20)がいたからだ。

 座敷で客をもてなすお茶屋と、舞妓を育て、芸舞妓を派遣する屋形(置屋)はもともとは分業制だが、今は屋形を兼ねるお茶屋も多い。駒屋もそうしたお茶屋のひとつで、現在は千賀遥さんを含め、7人の舞妓を抱える。

 2人の仕込みさんは、東京都出身のひな子さん(15)と福岡県出身の楽々(らら)さん(15)。どちらも島田さんと同学年だが、ひな子さんは昨年12月、楽々さんは今年4月に一足早く花街に入った。ひな子さんは昨年の夏休み、楽々さんは昨年の冬休みに、やはり仕込み体験をしたという。

 島田さんの立場はいわば、見習いの見習い。2人に教えられ、後ろをついていき、見よう見まねで仕事を覚えていく。仕込みはそうじや洗濯、電話番などの雑用をなんでもこなす。初日から大事なことは何でもメモを取るようにした。

 午前11時前。洗濯と風呂そうじを終えた島田さんは、2人の先輩と「寸志袋」づくりに取りかかった。寸志袋は、舞妓らがお座敷に向かう際などに、タクシー運転手らに気持ちばかりの謝礼を入れて渡すのに使う。頂き物などの包装紙を使って、ハサミで適当な大きさに切り、のりで貼り合わせてつくる。

 「ひめちゃんって岐阜やったっ…

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