政治が消した歌、私達が取り戻す 楽譜を探し重ねた演奏

有料記事

野島淳
[PR]

 ゆったりと流れるピアノの音と、透き通るようなソプラノの歌声に、会議場の50人ほどがじっと耳を傾けた。

 ドイツ中部アイゼナハで9月上旬、神学会の講義の合間に披露されたのは、ユダヤ系ドイツ人作曲家フリードリヒ・ゲルンスハイム(1839~1916)の歌曲。「ありがとう。良かったよ」。聴き終えた人々が声をかけると、2人に笑みがこぼれた。

 ピアニストのクリスト加藤尚子さん(43)とソプラノ歌手アナ・ガンさん(46)。2016年から「ゲルンスハイム―デュオ」の名で、ユダヤ系作曲家の歌曲をドイツ各地で紹介している。ユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)を進めたナチス・ドイツによって演奏が禁じられ、楽譜が廃棄されるなどして「忘れられた曲」となっていたものだ。

 尚子さんがゲルンスハイムを…

この記事は有料記事です。残り585文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません