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 青山学院大時代に箱根駅伝で「山の神」と呼ばれ、来年の東京五輪代表をかけた15日のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)に出場する神野(かみの)大地(26)=セルソース=を食事面で支える女性がいる。東京都内の学校で給食を作ってきた安西仁美さん(51)だ。プロランナーとなった神野から刺激を受け、仕事を辞めてサポートに専念している。

 安西さんはほぼ毎日、神野がコーチ兼マネジャーの高木聖也さん(27)と暮らす部屋に夕方出向き、3食分を作り置きする。練習の強度が高い時はご飯がのどを通らないこともあるため、汁物にそうめんを入れるなど工夫をこらす。

 「少量でも栄養不足にならないように、アボカドなど栄養価の高い食材を使うのがコツ」。そんなサポートに、神野は「メニューが多くて、何よりおいしい。サポートのおかげで競技に集中できる」と感謝する。

 管理栄養士の資格を持つ安西さんは、二十数年間、目黒区の小、中学校で給食を作ったり、食育の授業を受け持ったりしてきた。「他のことにも挑戦したい」と思っていた昨年春、実業団を辞めてプロになった神野が「食のサポート」を募集していることをフェイスブックで知り、応募した。

 テストのお題は、神野の好物、「チーズハンバーグ」だった。

 部屋にあったオーブンは外国製で使い方が分からなかったが、焦らない。フライパンで焦げ目をつけ、外はカリッと、中はチーズがトロリ。自宅で何度か試作した通りの仕上がりだった。翌日、神野と高木さんから、「お願いします」と連絡が来た。「決め手は料理の質の高さと、片付けを含めた手際の良さだった」と高木さんは言う。

 MGCに向け練習が本格化してきた今年3月、安西さんは仕事を辞めた。収入は減ることになったが、「お金じゃない。何事にも自信を持って取り組んでいる若い子に乗せられちゃったかな」と笑顔で振り返る。五輪という夢に挑戦する2人がまぶしく見えた。

 8月には神野のケニア合宿にも10日間ほど同行した。次男が5歳の時、オーストラリアに旅行した時以来、十数年ぶりの海外だった。

 目黒区職員から、「チーム神野」の一員になった人生。「チャレンジしていること自体が楽しい。やりたいことって、50歳からも開けてくるんですね」(山口史朗