半生を取材した記者、いま振り返って
樹木希林さんが亡くなって15日で1年。独特の夫婦関係や死生観に注目が集まり、希林さんを振り返る本が相次いで刊行されている。『一切なりゆき ~樹木希林のことば~』(文春新書)は、150万部を超える大ベストセラーとなった。
なぜこれほど、今を生きる人たちが希林さんにひかれるのか。生前最後のロングインタビューをまとめた『この世を生き切る醍醐味』(朝日新書)を読むと、そうした疑問に答える一つの鍵として、「恥」という言葉が立ち上がってくる。
この本は、長年映画界を取材してきた朝日新聞の石飛徳樹記者の質問に、希林さんが率直に答えた7時間を収録している。記された本人の言葉からは、希林さんの「恥」の感覚と、演技や死生観とのつながりが浮かんでくる。
インタビューの中で希林さんは、子どもの頃から「運動会に出ても、いっつもビリで、父親には『啓子ちゃん、恥ずかしい』って言われてたの」と明かす。そして小学生6年生の時、苦手な競泳大会が開かれた。全員が参加することになっていて、泳げるようになった子たちはクロールやバタフライといった種目に出る。希林さんは思わぬ「競技」に参加していた。
「それで、私、6年生の時に…