投資信託の不適切販売に関する原因調査で、ゆうちょ銀行が営業目標を問題にあげていたことが社内資料でわかった。日本郵政グループのかんぽ生命では、過剰なノルマが不適切販売の一因だとわかっている。保険に続き投信でも営業目標の問題が浮上し、郵政グループの販売のあり方が改めて問われそうだ。
ゆうちょ銀は勧誘時の社内ルール違反の販売について、「ルールの趣旨の認識不足」と13日の会見で説明。過大な目標やノルマの影響を否定した。会見での説明と社内資料の内容の違いについて同社に問うたところ、「本社の指導不足による営業社員の認識不足やマニュアルのわかりにくさが主因」「営業目標については直接の要因とは考えていない」と答えた。
朝日新聞が入手したのは、ゆうちょ銀が会見当日に社員向けに配った資料。約40の店舗を訪問し、「周辺環境も含め幅広に原因をヒアリング」した結果をまとめた内容という。
資料では、今回の原因を①社内ルール②意識③チェック態勢④組織風土⑤営業目標・評価と、5項目に分類。⑤について「お客さまより実績を意識してしまうことがある」などと説明している。対策の方向性として、「店舗への目標配分の見直しや営業の質に関する評価導入」と明記。記者会見や対外公表資料では①~③を中心に説明し、直接の原因ではないとして⑤には触れていなかった。
日本郵政グループ労働組合(JP労組)が13日付でまとめた交渉記録によると、会社側は労組にも①~③を今回の原因として説明。これに対し、労組側は「数値のみにこだわる推進管理体制やマネジメント(経営)体制が先行し、『お客さま本位の販売』ができていなかった証左」「数字(目標)に追われることにより、プロセスが守られていない等の管理者等のチェック機能が働いていなかったのではないか」と強く指摘している。
内部資料などによると、ゆうちょ銀直営店での投信販売目標は、17年度の4200億円から19年度は6100億円と右肩上がり。日本郵便は今年度のかんぽ商品のノルマ廃止を表明しているが、ゆうちょ銀の投信のノルマは従来のままだ。
原因分析の資料では、④組織風土の問題として、本社サイドの現場意識の欠如も指摘しており、「本社に相談する気になれない」「何か意見を言っても、変わると思えない」などの声を記している。
ゆうちょ銀行と日本郵便は13日、高齢者への投資信託販売で約1万9600件の社内規定違反があったと発表。日本証券業協会の指針に基づき、「高齢者の勧誘時は事前に意向確認する」との社内規定を設けているが、実際は手続きを省いていたという。約22万件の高齢者の契約の実態を調べる方針だ。
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