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老衰によって亡くなる人が増え、昨年はがん、心疾患に続いて死亡原因の3位になった。ほかに大きな病気を抱えることなく逝く老衰には「大往生」といったイメージが強いが、例外もある。本人も家族も納得できる最期を迎えるには、どんなことに備えておくといいのか。
東京都の野村保(たもつ)さんは今年6月、全身が衰えてほとんど食事を口にしなくなった。
98歳。10年ほど前に足に血栓ができて血管を人工のものにした以外、大きな病気はなかった。ただし足に力が入らなくなってトイレに行くのもつらくなり、とる食べものや水分の量は徐々に減ってきていた。訪問診療を担当したえびす英(ひで)クリニック(渋谷区)の松尾英男院長は、保さんが老衰の状態にあると判断し、家族に説明した。
ヘルパーらの支援を受け、同居する長男俊夫さん(64)、妻省代(まさよ)さん(62)を中心に家族が交代して保さんを24時間態勢で見守った。ほぼ寝たきりの状態になっても、声をかけるとうなずき、離れて住む1歳のひ孫が訪れると笑顔を見せ、手を握った。
7月下旬の未明、俊夫さんが…